イラクのフセイン大統領は、アラーの神を信じつつ、要求を貫徹できると公言したが、結局一つの条件も得ることなく大敗して降伏したのみでなく、
イラク国内からもフセイン打倒の声が挙り、今や内乱状態にしてしまいました。多くの国民は重なる死の恐怖におびえきっているようです。
近くイスラム教の断食の期に入って、千四百年間続くアラーの神への忠実な信仰行事が行われるようですが、戦争犠牲者の遺族は、
死者の天国での蘇りを信じて慰める他はなさそうです。吾々も無明煩悩によって起った戦争犠牲者の菩提を祈るばかりです。
この戦争について、多くの書籍が刊行されました。まだまだ増加することでしょうが、それも当然なことです。
この戦争がなければ、吾々日本人は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教徒が、神の命令に従って、
異教徒の国や民族を殺戮してきた歴史を知らず、目を覚ますこともなかったことでしょう。
特に、キリスト教が生れ、ローマの法王庁が出来てからは、他国の国王でもキリスト教徒であれば、法王の命令を至上のものとして受けてきました。
異教徒の国に武力で侵略して、罪なき住人を問答無用と刺し殺し、焼き殺したのです。
その数、数千万人にも上るものだったそうです。中でも有名なのが十字軍です。
このために、アラブ民族の国土が破壊され、国は滅亡させられました。又一方、キリスト教国に入居したアラブ民族も人口が増えて、
キリスト教徒の国土が自然にアラブ人即ちイスラム教徒の居住国となった例もあります。
イスラエルは、元はユダヤ人の居住地だったのが、追われてしまい、ユダヤ人は流浪の民として、世界中に拡がったのです。
けれども、ユダヤ人の経済力は世界で最も強く、米国の富について彼等が主要な地位を占めているのはよく御承知のことでしょう。
このことは、嘗てのアジア侵略の原因の一つともなっております。聖書によれば、エホバの神は、必ずしも善人を救うと約束したものでなく、
また信者になったら、救い奇蹟を与えるというものでもないのです。
神の意志は、神のみ知るものであり、その福音は法王と雖も知ることのできない絶対的なものであるとするのです。
パウロの言葉に、次のような意味のものがあります。神に対して人間が、如何に神に欠点があるとか無責任であるかとか言っても、
それは無駄なことであるというのです。譬えて言えば、焼物の陶工の如きもので、土は陶工によって練り上げられ、
適度と見極められて花瓶になるか、食器になるか、また美術品になるかである。陶工の意志一つで、便器にさえされるのである。
それを人間が何の彼のと言うのは、何の意味もないことである。創造主が土を作ったものであり、人も作られたものである。
その作られた者が神に不幸を言っても何の権利も理由もないのである。神が作った陶器を打ち砕くのも、神たる陶工の自由である。
こういうのが唯一神の絶対権の意味なのです。キリストもその神の御心を信じ、愛を説くが、
その結果はキリストも知ることはできないというのです。神は、処女マリアに神の子を妊娠させたが、
生れた子供は救世主ではあるけれども、神ではないというのです。
モーゼに告げた神の言葉が聖書であり、神が創造したアダムとイブが人間の祖先であるとしますが、ここに問題があります。
神は人間を造ったが、それについて神は全く責任がなく、また神が勝手に告知したのが旧約聖書なのです。
その後、四百年というものユダヤ人は、アフリカに渡って奴隷となるという長い苦労があったのを、エジプトを脱出せよ、
神が力を貸そうと告げた神の言葉を信じて、ユダヤ人の指導者であったモーゼが、監視人を殺して密かに同胞を引き連れて脱出したのです。
宇宙の真理を神と呼ぶ現代キリスト教は、このような勝手気ままな神を唯一神として崇め、一切の他の宗教の存在を否認するのです。
昔は千年近くも異教徒を殺したのです。神の愛とは、人類全体ではなく、このようなユダヤ人にのみ与えたものなのです。
だから侵略と殺戮が行われたのです。ユダヤ人やキリスト教徒に愛があっても、異教徒をそのまま生かすことは許してないもので、
此の世で神の審判から逃れても、死後の世界で必ず審判して止まないという程、呪いの神であり嫉みの神である、
その神の言わば罰を怖れながら信じて来たのがユダヤ教徒であり、キリスト教徒なのです。
同じ唯一神の信仰から生まれたイスラム教は、マホメットによって、キリストの六百年位後に説かれました。
マホメットは、名門に生まれたのですが、その頃は、名門も衰退していて、両親は早く死に、育てた祖父も二年で亡くなり、
おじに引き取られたという、孤独な少年時代でした。長じて隊商に入って商人の仲間にもなりました。
彼は正直者とあだ名される程だから、信頼されてハーデシャという富裕な夫人の仕事を助け、二十五歳の時、
四十歳のハーデシャと結婚して、安定な生活をするようになりました。メッカ近くのヒラー山の洞窟に入って、
時々瞑想に入ったと言われます。こうした生活からキリスト教やユダヤ教をも勉強して、両教の欠点の多いことを知ります。
彼は民衆の心は添い易く、争いの起らない方法を考え、神の承認を得る暗示を以て、神の天啓と称することによって、
新しい一神教を開くことになったと言われます。これも立派なことで、直接神のお告げを受ける筈はないのですから、
モーゼはじめ、いわゆる預言者の受けた神がかり的旧聖書よりも、現実性のあるコーランを作ったとしても、非難される謂われはないでしょう。
しかし、仏教からみると、共に真理の意味は見出せないのです。でもそれを信じて、他教に損害を与えなければよいのですから、
キリスト教よりは安全です。律法は法令を集めたもので、国の法律を不要にしたようなものです。
キリスト教より危険性がない点は確かですが、同じ神の信者に対しては、拒否はしないというものの、偶像崇拝は許さないのです。
インドで紀元千二百年から四百年に及ぶ破仏を行ったのは、イスラム教徒がインドの王となったためです。
異教の偶像として、仏像を悉く破壊し、仏寺を破却したのです。僧侶は殺されるので、逃げたり還俗したりすることになったのです。
今日、世界的に有名なブッダガヤの仏塔のみ残ったのは、当時の仏教徒が一握りずつ土を持ち寄って埋め、
小山の如くカムフラージュしたので難を逃れることができたのです。発掘されたのは僅か百数十年前のことと言われます。
平和な不殺生の仏教国として残ったのは、スリランカですが、最近、イスラム教のアラーの神と仏教の涅槃を混合した上に、
更に神を合わせた新しい教団が出来て、ヒンズー教徒や仏教徒に危害を加えるので、政府は武力をもって彼等の寺院を爆破したことがあります。
確か平成元年のニュースです。一神教は、自我の強い宗教ですから、アラーの神やエホバの神以外の神や仏を偶像と誤解するのです。
彼等には、仏陀が悟りを発見した真理の意味も、法（ダンマ）の意味を理解する能力がないから、
利害反する時は、必ず相手を破壊する挙に出ます。イラクのフセインがクウェートから退却しても、異教徒ならぬ、
自国のイラク人を意味なく殺すこと、反フセインの国民運動に対するやり方を見ていて、
とても一国の長のすることとは考えられないのは、要するに唯一神のアラーの神を信じているでしょうが、
仏教からみると、彼の心は既に血を流す悪魔の心ですから、その狂った知能は益々魔の正体を現わすことになるでしょう。
仏教は自ら殺生を行うことは許しません。一神教が宗教であれば、仏教は宗教ではありません。仏教は仏教です。
真理一筋に衆生の苦厄を救う教えです。信じる者を独り救うのみに止まず、地球上の国々を生命自然の道に導く世界なのです。
特定の神の指定するが如き一部の救いに止まるものではなく、まして仏陀の指令によって戦争を起こすことなどは絶対にあり得ません。
人間は人間間の煩悩を強化して血を流すことになることを戒めます。
国際問題についても、仏教国は人間個人間の問題と同じく、相手を尊び非理は非理として、互いに凡夫であることの反省を求めるのです。
哲学なき現代は、ただ利益の追求のみ行われます。我国の大都会集中の生活で、
住民は利を追って互いに狭い兎小屋住いを結果的に理想生活としているのです。
犯罪の増加を止めることが出来ないのは、教育に宗教教育がないからです。
聖徳太子の十七条憲法は、このことを第一に教えています。現代日本の各界には哲学がありません。
イラク、イスラエルは哲学宗教はあっても、その主とする宗教と哲学そのものが非真理教ですから、
神の名の下に戦争と侵略が常に何らかの形で行われてきたのです。湾岸戦争が、日本人を仏眼に目覚めさせることができれば、
意義のある百三十億円の醵出でしょう。活きた平和の理念を掘り起こして、
人類に仏陀と神とを比較する心を喚起するための善縁となることを祈って止みません。
醵出金が国民がその意味となる特別税によるものであるならば、それによって日本人自身が向上し、
しかも世界の目を蔑視から尊敬に変化せしめることにしたいものです。
今の日本人は、世界で唯一の無哲学国民であることを暴露しました。
この点で、今日の世界先進経済大国たる日本は、政界、財界、教育界、福祉会、医学会もただ利益の追求のみあって、
人類必修の哲学なき、乏しい国であることを反省したいものです。平和が必ずしも真理の現れでないのは、人間が私利私欲に傾き、
真理を求める菩提心が起こらないからです。アインシュタインも言いました。平和は真理に非ずと。
フセインの如き魔身も現れるから防備だけは必要です。世界は早く各国の軍備を廃して、
平和を守る共同軍を創設する必要があり、これの使用されることなきを期するのが文化の骨子だと思います。