昭和天皇は、史上最大の国難に際し、吾国の存亡を憂えて、戦争の終結を決意なさいました。
ポツダム宣言の受諾、戦争放棄の憲法、北方領土未解決、四百万人の戦争犠牲者の悲しみ、諸外国に戦禍の災厄を掛けた罪、
国民が灰土に投げ出された、あの暗い現実に対し、全責任を負われた天皇でした。この天皇がおられてこそ、「奇蹟」の言葉さえも及ばぬ、
世界一の繁栄の国ニッポンは、世界中から羨望の的となり、その発展は嫉みの対象となりつつあるのです。
史上皇位最長にして八十七歳の天寿を以って、今年一月七日「天皇尊儀」の霊牌に昇天なされました。
今上天皇は平成の新しき年号と共に即位遊ばされました。私は大正、昭和、平成の三度の年号を戴いて、
国の盛衰と苦楽を共にして生かされてきたことになります。こうした国と世界の流れの因縁の中に、密門会の会長として、
会員の皆様から数々の御協力を賜り、今日に至りましたことを厚く御礼申上げます。
お蔭をもちまして、総本部真成院は、建築費の支払も完了目前となり、更に三階の大改造による大広間兼、会員各位の三篭所、
加持殿も八分通り完成いたしました。これも皆様の心からなる御献金のお蔭であります。
わが真成院密門会は、宗祖弘法大師の類い希れなる天才によって、解明された教学を正しく頂くものであります。
大師は、難思実践の法とされた。漢文と梵語とから成る法典を誰もがよく理解できるように解説され、しかも鮮明に、
雑部の密教と正純密教との違いをよく明らかにされました。私はその法脈を受けて、昭和四十年高野山に於いて学修灌頂に入檀、
大阿闍梨の法位に記録されるために、唯一の秘儀として、大師の御影に、直接愚身の手を触れさせて頂いた弟子であります。
時代が変ると共に、国民の教育も変り、社会の常識も大きく変ります。但し、物の方面では確かに進歩したのでしょうが
、精神面の退歩は否定できません。しかも、制度上の影響によって、若い人たちには、折角の大法たる正純密教の要点が知らされません。
世界宗教として、人類救済の唯一の実法を持ちながら、これはまことに残念なことで、人類の将来に大きな憂いを覚えざるを得ません。
既に著書にも書き、講話でも述べております通り、私は、大日如来成仏神変加持の救いを、
仏教界において最も進歩した真言易行道として発見したのです。
現代のような科学万能時代には、この心肉一致の教理こそ求められなければなりません。
引いては、森羅万象に仏徳を悟らしめ、如来の大悲を実際に諸々の面に与える、無限の価値の源泉であると申せましょう。
随って智慧によって生産された物に対して、すべて合掌ができるのであります。
ここで特筆すべきは、日本仏教史上に於いて光るのは。心と肉身（仏心不二）を平等に救済したのは、吾が大師を措いて無いという事実です。
仏教界で最も広く感化を与えた高僧とされている道元、法然、親鸞にして、残念ながら心の救済はあっても、身体、物界の救いを説きません。
大師の大衆救済の御誓願とその行蹟を窺うに、曼荼羅上の諸仏は、大日如来の大悲神変加持即ち御本願の姿であります。
仏教では顕密共にその極致の真実とするのは、仏心不二、多即一、六台無碍である筈なのに、従来どうみても物の世界を避けています。
オンアビラウンケンの真言は宇宙一杯の真実語であり、物と心の救世者なのです。
この真言を信じ念誦すれば、如来の救済は、
人の心のみではなく、血の流れる肉体、即ち煩悩身そのものに見出されるのです。しかも、農作物はおろか、広く植物界にも、
その大日如来加持の御利益として及ぶのです。実に素晴らしいものです。その為の特別な聖地巡礼や法具、造作の必要なく、
また生活の場から去って修行することも要りません。僧侶の伝法になる有相の三密即ち多種多尊への一々の作法を超えて、
根本仏の大日如来の御姿そのままの姿に行うだけです。朝夕の家庭内の別時三密とし、平常の起居動作に在って、
真言念誦（念仏）を行うのが真言易行道であります。
こうして、今生即永生の命であることを信じた生活は、真言行中の悟りの生活そのものなのです。
信仰の不思議は、霊界の声とか幻覚幻聴の如き低級な鬼神類の霊能力的なものではありません。
むしろ、そのような現象を無視して消除することなのです。この世に生れた者の当然の宿命の荷は、苦楽二面の外にあり得ず、
風雨寒暖の世界があればこそ、これに耐えて、信心の喜びが湧くものです。煩悩即菩提の仏界が開けるのは、
ひたすらに如来の神変加持力を信受することで、それより外に秘事はないということです。
今年は今迄になく多くの難病者、癌、肝炎、糖尿病、婦人病者を救いました。
そして難病とされる精神科の憂いも消し、希望を与えたことです。その反面に、
皆さまに対する満足な応対に欠ける点がありはしなかったかと気になります。
世話人方には、吾が仕事として補佐されることをお願い申します。遠慮なく注意を下され、お世話して下さることをお願いします。
真成院は境内が狭いために、宗教活動には無理がありますが、密教的な大自然の呼吸と交流できる唯一の場が青龍寺であります。
東京近辺では、ふさわしい地が得難いので、御承知の経過によって新天地の青森が授かった訳です。
昭和大仏の開眼記念法要と、宗次郎のコンサートは、見事な成功を収めました。金堂も順調に工事が進み、東北一の美観が予想されます。
御協力は、御自身相応の最大目標額を、二ヶ年半或いは三ヶ年で達成して下さい。
命根に刻むにふさわしい功徳を、報恩行として頂きたいのです。聖地は遠方にある訳ですから、賛同する度に大きな徳を頂くことになるでしょう。
皆様の御懇志をお待ち申上げます。