七月十三日のお盆法要は、東京総本部の真成院本堂に於いて、東京近辺の密門会会員の参加を得て、今迄にない程、盛大な法要が厳修されました。
回向堂の椅子席が満杯のため、中陣の畳の席も一杯になりました。全国から御先祖に感謝する塔婆を供養されました。厚くお礼申し上げます。
今年の御盆法要を回向する新しい御魂として、深い悲しみの涙にかきくれるものがあります。
世界平和の光明が、米ソの両巨頭の握手によって見えて来て、軍縮が進展し、中国にも平和の灯火がともされるかと思われたのです。
ソ連のゴルバチョフ書記長の三十数年振りの訪中、劇的話合いというニュースの直後、中国では、天安門広場に於ける学生のデモ行進を、
争乱行為と見做して戒厳令が発せられ、遂に戦車を先頭にする戒厳軍によって、今迄にみられなかった虐殺が行われたのです。
一人の独裁者の決断により、無辜の民、数千人の尊い生命が失われました。自国の車によって平和を求める集会は、血と火炎に包まれた地獄絵となって、
世界中に報道されたのです。同情の言葉もなく、ただただ生命を断たれた犠牲者の霊を弔うばかりです。
新盆に招魂される御魂に心から供養する、菩提の祈りなくしてどうして仏教徒と言われましょうか。
日本に漢文の仏教経典が伝えられて以来、僧が来朝し、また日本の多くの名僧が学んだ国として、私たちは中国を尊んで来ました。
でも、日清戦争以来の軍や大陸浪人による勝手な侵略は、深く反省すべき歴史です。
中国共産党が、平和と進歩を要求した罪なき若者達を戦車で下敷きにし、砲火を一方的に開いたのは、全く無防備な裸同様の国民同胞を一片の物質、
いや石コロ以下にみるもので、これは唯物主義による惨状であります。私たち仏教徒には、とても理解出来ないことです。
外国との戦乱、或いは国内の争乱で、共に武力を行使するのなら、過去にもありましたが、このような一方的な残虐行為は、あまり例がないことでしょう。
尤も、キリスト教の歴史を繙くと、武力もストもない時代に、単にローマ法王庁の教旨に反するとの一方的な罪名によって、魔女狩りが行われました。
この、一党独裁による生地獄以上の悲惨な歴史を思うと、人間の心、知の用い方で起る参事は、
果たしてこの天安門の事件で終結するものだろうかと思われます。私は日頃、原水爆の廃止によって、
人類平和が来るものとする我が国の平和運動をみる時、確かに立派な運動ではあるが、実際に平和が実現するのは、
仏教の普及なくしてはあり得ないことを唱えて来ました。これは、一介の僧である私一人の主唱に過ぎませんが、しかしながら、
真理から教えられる平和の道への必要条件を知らずして、単なる言葉や宣伝で平和の招来はあり得ないことは、よく理解されることと存じます。
地球上の永遠の平和は、形は違っても、無我に立って、一切衆生、皆如来と一体となることと悟り、正に如来の加持の世界が、教育倫理、道徳、
法律の世界に普及することが根本なのです。それなくして、平和を語ることは無意味なのです。マルクス・レーニン主義は誰も信じなくなりましたが、
逆に今や唯物思想は、日本でも世界でも力をもち、教育、マスコミ、政治、経済界を色濃く染め上げています。
下は小学生から、上は司法界まで、悉く唯物思想の中毒症状を呈して、互いに無駄な支出に追われつつあるのです。
東京では七月に、お盆供養会を厳修しますが，来月八月のお盆は、全国的に、日本人の一年のうちの最大の先祖を供養する行事として行われます。
帰省者も最も多い時であります。
青森の青龍寺は、真成院の信徒の協力で創建されましたが、開眼五周年を迎えるお盆中は、万灯会としては、広い境内に献灯されます。
昭和大仏さまの御前を中心に、長い参道六百米の両側に並ぶローソクの光が、この思想の暗国の中に輝きます。
私の命ある限り、いや生れ変り死に変り、唯一筋に願うことは、仏教、特に正純密教こそ、世界に広まるべきだということです。
心の世界も科学の宝庫として開いてこそ、人類平和は期待出来ると信じたいのです。
どうぞ有縁の皆さん、一灯を御先祖のために、亡き親、兄弟、子供のため、そして、一灯は、
中国天安門の犠牲者の菩提のために献じて下さることをお願い申し上げる次第であります。