昔も今も不治の病の筆頭に癌を挙げますが、これは知恵のない話です。
新聞のアンケートを見ても患者に病名を秘すことが最も大切なこととされているようですが、
病名を語ることがタブーとなっているのは久しいことです。医学が進歩したといっても、
癌については別格であるとされています。要するに癌については、現代医学といえども全く暗中模索の状態なのです。
ところが、加持の力は、どんな癌でも治すとは申しませんが、癌を早く知り、
条件次第では七割前後の治癒の可能性があることは実例が語ります。癌の種類によっては、加持も及ばぬ症状もありますが、
有難いことに癌患者が前期の苦痛の激しさを知らずに、無痛安楽往生ができるのです。これは、密教の救いの特徴です。
医学界が御承知の通りであれば急に自分や家族が羅病した時に、正純密教の加持を知らぬために、
病院に委せる外ないというのは無理のないことでしょう。
委せるのも、普通の病気ならよいのですが、それが癌となると、全く困ったものです。
それは、癌治療の方向が抗癌剤に向いているからです。抗癌剤は、特効薬でもない、
ただ厚生省で使用を公認されているに過ぎないのです。治るから認定したのではなく、
認可申請に添付した治療データによると、十万人の患者の中一人が治ったのが理由だそうです。
癌細胞はたしかに減るらしいのですが結局人間が生まれながらに持つ抗癌性抗体を作る機能を破壊するのみでなく、
全身的に五臓等を痛めるから、却って苦しみが増し、死亡を早める場合さえあるようです。
抗癌剤を用いると、或る程度癌細胞は減じても、間違いなく白血球も激減します。
回復しても平常値の半分程度であれば良い方でしょう。つまり、毎日が、癌細胞との戦いなのです。
手術によって治った人もありますが、その中で完全に再発なしの人は何人あるでしょうか。
愛知県の四十一歳の働き盛りの男子が胃と肝臓病で、余命三カ月と云われ、その妻が加持を求めてきました。
未だ若いのだからこちらも努力しましよう。しかし本人や周囲の人々の加持力の信仰が必要だ、
これが一番の問題だと申して続けました。幸いに好転して、十日で外見は勿論のこと、本人も元気になり、
食事も進みました。結局二カ月を経ないで、ＣＴ検査で癌の病巣はどこにもないとの診断でした。
担当の若い医師は、誤診とも思うが、ＣＴに映らなくとも、どこかに癌が隠れているに違いないので抗癌剤を打つというのです。
数度帰宅を許された程なのに、抗癌剤を打つから加持はこれで止めてくれとのことであります。
常識からみてこの医師や家族たちの考えは理解に苦しみます。
もう一つの例は、ついこの間の六月九日のことです。東京の会員の紹介で、五十五歳の公務員、肝臓癌とのことで、
加持を受け、申し分のない感応を見ました。三日程は身がだるかったようですが、その後元気で、
体温も上り熱いことを伝えてきました。この分なら早く治ると申しました。私はこの病人は、
入院したらもう悲観すべき結果になると思い、危険で確信のない治療より、
もうしばらくお加持の経過を見るならば、きっと自信がつくと申しました。
しかし、入院して、三日目に腹部に穴をあけて管を入れ、抗癌剤を注入するというのです。
医師でない私にはどうすることもできませんでした。でも、まさか三日後に電話で死亡の連絡を頂こうとは想像も付きませんでした。
米国なら医師の責任として追及されるのではないかと思った程です。
このような事実は沢山行われているのです。要するに、国の規則、社会通念は、
無形の宗教の力を科学的に説明がつかないからというので全く歯牙にもかけません。
今度刊行した本は、『密教の門』という題です。高校生程度の学力なら誰でも読めるものです。
これはとりわけ医師に捧げたい本です。私たちは医師の仕事を横どりしようというのではありません。
医師が仏教の心を持つ求道者となるのを期待し、その医師が難病を治すと共に、社会の癌をも治す活動をしてくれることを期待するのです。
密教は、日本から欧州へと広めるよりも、欧州から日本へ逆輸入される方がよいのかもしれません。
そのために、別に入門書も準備中ですから（日本文は完成、英訳に取りかかっています）、
英語圏の知識人への良き贈物となるでしょう。キリスト教の神に勝り、薬物科学に勝る密教の心がよく理解されるだろうと、
ひそかに自負しております。が、それはまだ先のこと、今は、とにかく私共の仲間の力を証明として、
人類共同の苦患の解消に努力しようではありませんか。