今韓国では、民主化を要求して暴力を伴ったデモ行動が全国主要都市で行われているようです。
公平な世論の現れであるという説、来年のオリンピック開催をねたむ北朝鮮の工作員が、
野党統一民主党員となって起したという説、キリスト教の指導者の中に北鮮のシンパが潜伏していて、
単純な学生を巧みに扇動しているとの説、様々であります。いずれにしても、
私達は単に隣国とか他国のこととして傍観することは許されません。
韓国の文化と仏教とは日本の師でありました。秀吉の侵略戦たる文禄の役、
明治のいわゆる朝鮮併合を考えると、一日も早く平和に帰って、
世界平和のシンボルたるオリンピックが、立派に成功することを祈るばかりです。
外国人が、あと一年余の政権交代を待てないものかと思うのは勝手な愚痴かもしれません。
さて、第二次大戦後の南北朝鮮分断によって、それぞれ独立政府が成立してから今日に至るまで、
韓国は共産主義の侵略を防ぐために、米国の援助があったとは言え税収の三割を国防費に充ててきたのです。
戦禍からの復興、開発途上国に位置づけられた貧しさ、その中にあって北からの不安に常時備えて来て、
日本の防衛線の身代りになって来たことは、日本の識者のよく知るところでしょう。
私が韓国へ初めて行ったのは、『密教祈祷の秘密』の刊行が縁で、韓国真言宗の復興を志す、
東大門龍頭洞真光院の孫栄振師に加持法を授けたのが契機となりました。十年前のことですが、
首都ソウルにキリスト教教会が一万もあるのには驚きました。千六百年来韓国は仏教国でしたが、
密教はなく、禅と念仏の二大宗が代表で、二百カ寺足らず残っているのみです。李家五百年の統治の間、
仏寺は山や辺境の地にあったからです。それでも全国的には壱阡二百万人登録されている由でした。
産業はこの十年間の発展がめざましく、特に電気製品は世界でも、日本に次ぐ製産高とされていました。
製鉄造船で日本の貿易黒字が五百億ドルを数えていた頃、米国の考えでは、
日本は金があっても国防費を出さないが、
韓国は貧しい中に国防をまじめに実行して北鮮に備えているのは信頼できる、
韓国に金と技術を与えて育成する方が、将来日本の資本と生産力の猛威を抑えるに必要であり、
防共の一大勢力を温存できるとの考えがあったようです。これがこの三四年の発展ぶりとなり、
輸出も順調に伸びているようです。
私は韓国仏教に協力するため、貧しい中から寄附金や出版費を出してきました。
韓国仏教徒は穏健であります。歴史上、北の大国中国、ロシア、
南の日本からの痛手を受けながら国土を維持して来られたのは、忍耐と、儒教、仏教の平和思想の賜です。
朝鮮軍には復讐心がなく、これは忍耐の徳の故です。尤も力不足との計算もあったでしょう。
イスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒の殺戮、闘争の歴史、今日でも宗教的テロの犠牲の多さを知ると、
単に財力がないというだけで忍耐力は生まれるものでないことに気がつきます。
苦しく貧しい時程惨事を引起すのは、一神教の信仰の特徴でしょう。
今日の日本でも、韓国でも、若い人や史実を知らぬ人は、キリスト教は平和の宗教だと信じ込み、
仏教徒には能力がない、生命力がないと思うでしょうが、一神教の特徴は自我の教えにあるのです。
韓国の人は時の流れをよく見る心が深いから、分断国家ながらも、独立して三十年余の努力の中、
めざましい発展を見、明年のオリンピックを眼前にした今、議会政治を無視して、
非常手段で政府転覆を実現しようとしています。
これはキリスト教徒の急な成長を無視しては語れないところです。神父が目的のため納税反対、
国民義務の拒否を呼びかけるさまは、神の啓示を信じ求める一神教の特徴をよく示しています。
今日まで地球上の多くの戦乱は、この神の信仰から生まれたことも忘れてはなりません。