現代社会は、仏教と科学は別物で、同じ世界で語る性質のものではなく、単に倫理、道徳の上で話合うに過ぎないものと考え、
仏教は人の死に当ってからの問題としているようです。
現代医学が難病とする癌、慢性病に対し、新薬が次々と開発されても成果を見ること少なく、副作用の多い薬物療法か、
ただ患部を切除するだけの手術しか手がないようで、少しでも延命できれば医師の責任は果たされるというのが現状では
ないでしょうか。職場や町村で集団検診、巡回検診をして、疑いのある患者は強制的に入院させるだけです。しかしながら、
早期発見をしても、抗癌剤を用いた場合は、助かる幸運者は少なく、刻々と迫る死の恐怖と戦うばかりです。現状は新聞、
雑誌に新薬の研究発表を以て、将来に希望をつなぐ程度です。
こういう風潮の中では、いくら私が真実に治した事例を書いても、マスコミの取材の対象になりません。奇特な医師が
この真実を語っても、医者仲間から気違い扱いされる始末です。そんな医師の中には、現代医学に疑問を持ち、加持に
対する理解を深め、堂々と私に患者を紹介する方もいらっしゃいます。してみると、宗教とは科学とは別物であるという
考えはいずれ捨て去られ、宗教も信用すべき宗教と迷信とに分けられる時代がくるに違いありません。
癌が治り易いことは、既に拙著に述べ、新聞広告もしてきましたが、明確に、癌等の難病が治るとは書けないのは残念
なことでした。少なくとも、癌の患者が、病名診断と同時に救いを求めて来れば、加持によって十中七、八は救われるでしょう。
中には、病巣が広く転移して手遅れだったり、無信心にして加持を否定する人があったりしますが、それは例外です。
不幸にして手遅れで再起不能でも、加持の救いは成仏道ですから、無痛安楽死で往生の美を示します。仏教者は、
治すと言えば不審に思われ、誤解を招くから、安楽往生に導き祈るという方が早く信用されるかと思う程です。
世間の人は、仏教が科学の母体であり原理を説くものであることを知らず、加持というものをキリスト教等の超自然
の神の奇跡と同様にみているのではないでしょうか。西洋の科学者は、宗教と科学の分離を常識とした考え方で信仰しているから、
日本でも非科学的な神霊の力で治ると思うようです。現世利益の深い哲理も、その実践面で、長い間迷信的なものが
混入してきましたから、誤解されるのも止むを得なかったとも言えます。
私は常に破邪論を兼ねた本を刊行し、迷信邪教と正純密教とを比較してきましたが、密教の加持力のお蔭で多くの人が治り、
よしんば死に至っても、安楽死は間違いないことを報告しているつもりです。ただ残念なことは、私の方に求め来る人は、
癌に悩む本人には病名を秘して、家族が隠れるようにして来訪するために、本人が直接に依頼する例はなく、従って治って
もお礼に来るのは本人でなく依頼した人だということです。しかも、癌に悩むにしても、入院して化学療法を受け、それで
効果がないので、病勢が進んでから来る人が多く、又手術後再発して来るために、大変な努力を要します。現代医学では、
癌の手術後の再発には施す術なしが定説だと聞いております。けれども、この定説は加持の世界では通用しないのです。
実際に経験した者として言えることは、癌と診断直後、又は疑わしいとされた時は、本人自ら来られると嘘のように解消
することが多いという点です。薬物過信、副作用の弊害は侮れないものがありますが、この問題は、医師のみ責任を押付けないで、
本人自らが、自分こそ生命体たることを確信して、正しい救いに覚めて、心身共に円満であって欲しいものです。
早く大日如来の大悲を信じて、治るも治らぬも如来の加持力だと受け、喜びを弘めること、これが弘法大師の御心です。