冬の寒さも峠を越した感じです。青龍寺の大仏さまの境内も積雪が下降しつつあります。毎年の自然現象は私達に
智慧を与えてくれるようです。
さて、日本は単に日本のことのみを考えるだけでは済まなくなって来ました。儒教的な倫理道徳のみで、まじめに、
勤勉な努力をしても、必ずしも個人の善果は期待され難い。国家社会も同じことです。地球上の人類は皆欲望の満足
を希って努力し、競争します。自己保存と優位を得るために、さまざまな術策が謀られて、我々の知識だけでは将来
の安定は期待されなくなってきました。ここに仏教の根本である諦観を深く心に刻んで、いかなる災難が来ても、
頭や胸を痛めて、天寿を縮めるようなことがないように、日頃の悟りを深く忘れないことが必要になって来るのです。
人類の造る大きな供業は、密教は特に重く視ます。そのための成仏道です。供業の報いは大きな流れとなって
おります。小さな○○神様の信仰による救いとは違って、宇宙の生命たる大日如来さまは私たち一人一人に平等の
命を与えて下さいました。不生不滅の永遠の命を根底に頂いて、日々その生命のお蔭で、一切の存在の生命と交流
している訳です。
人は逆境に至って苦悩が続くと、ややもすればこの心を忘れて、目先の甘言に迷い込むことが多いのです。
密門会の古参会員は、よく平素正純密教の教えと心構えを信じて下さるために、健康であるばかりでなく、家内中
の平和と明るさを保っています。又仕事の上でも、円高不況の中にありながら存外困難に負けず、不況の波に揺れな
がらもよく飛び越えて、日々仏恩に感謝されている方が少なからずあるようです。私はかつて、福分の求めを焦るな、
福分は追うべからず、授かることに感謝すべきだと申したことがあります。このような広い気持を育てる人は、
平素から焦らず、備えを怠らないものです。
信仰し、特に難病を救われた人で、よく大日如来の教えを信じ理解する人は、信仰生活者としての順序をわきまえて、
感謝の心が自然に表現されるものです。
勤行次第の如く勤行し、大日如来像を安置し、日々香華、お水の供養を欠かさないようにして下さい。本部から遠く、
毎月お詣りできない人は、お賽銭箱を受けて毎日供養して、本部（関西でも、東北でも）に献金、又送金して奉納
されるようです。そういう方は毎年の正月祈祷会の申込書を常に正しく書いて送られるので、気持ちが良い程です。
臨時の献金は決して強要しないように努めて来ましたが、自ら喜捨して下さる送金は、その信心の真心が私たちの胸
に響くものです。関西本部開設に際しては、仏具、改装費が全額満たされたのみでなく、保証金の分も御協力を賜り
つつあり、只々感謝あるばかりです。
大阪地方は新興宗教が盛んで、本会の進出には苦労が多いのに驚きます。歴史的に仏教の盛んな大阪が、以て非なる
邪教に汚染されていることは、密教界の恥です。ところが最近の会員方のお話を聞き、感謝の志をお供え下さる御気持
を汲みますと、なかなか心強いものを感じます。
要するに、求めない感謝の信仰をしているのに、物事がよく運ばれるということです。密門会は、ただ病気が治ると
いうことだけで、どうも健康者には縁がないという批評が多く聞かれてきました。これは早い時からです。随って病気
に関係がなければ会費は出し渋ります。未納者もありましたし、会報を中止した人も決して少なくありません。
それでも私は、福分を与える信仰の甘言で釣ることはひかえてきました。本当に経済的に困る人の願は秘めて祈念し、
供養してまいりました。このお蔭を頂く人は勿論のことですが、特に欲願を表にしない、常識豊かな祈りと五大願を
大事にして真言行を続けてきた人は、いつのまにか今日の幸せを授かっていることに気が付かれるでしょう。
願望の祈りは、何があっても五大願を忘れてはいけません。魔の心は、この五大願を心から祈ることによって解消
してゆくのです。
今日本の仏教徒で、日々の自らの勤行に、心から五大願を祈る人は何人あるでしょうか。小さな欲願に熱心な人は
多いようですが。
友人や自分以外の者のために加持してあげることは最も自然な信仰です。仏像も、供養箱も必要ないものだ、
では福分は語れません。今年は、平素信心なされている人々の有難い体験談を承り、正法に誤りないことを知って、
お互いに密門会会員の誇りを保持したいと思います。このことに共感するお方は簡単な報告を編集部に投稿して下さい。
これは私にとっても何よりの励みになるでしょう。