干支は俗の習慣ですが、考え方を、一年を良い方に送るために、めでたく感じようとし、
明るい期待を持つために、人生には必要なものでしょう。兎と言うと普通は白兎を用いますから、
その純白さ故に正に平和のシンボルの一つと言えましょう。兎と亀の寓話があるように、常識
としては跳びはねる方が早いでしょうが、油断は禁物です。
世界は闘争の空しさを認識しなければなりません。闘争の極限が戦争だからです。これこそ
無駄の骨頂であり、罪悪の王であります。それは誰でもが知っていることですが、こう申している
間にも、地球の何所かで砲弾が発射されております。又戦争ではないが、血を流して死も悲しみの
場があるのです。
世界は、白兎の如く純白にして、平和で争いを避けることに努力しなければなりません。世界的
には米ソの軍縮交渉、日本としては北方領土返還要求、いろいろの問題があります。
けれども仏様の目から見透したらどんなことになるでしょうか。
残念ながら、一つの大きな問題が解決したと思っても、又々次に大きな問題、心配事が起ることと
思います。核が廃止されても、人間には我欲をコントロールできないからです。文部大臣の発言で
韓国国民を憤らせながら、それでいい気分にひたる人もあり、当然の発言だとする層もありますが、
いくら自国のために行ったとは言え、あの日韓合併は罪造りなことでした。このような反省も、社会の
状況によって罪も善と認めたり、善を悪と判断するのではいけません。将来の友好を一つの手段に
考えるようでは解決はできません。罪には素直に懺悔してこそ平和がもたらされるのです。
日本にしても韓国にしても、仏教は外来の宗教であり思想であります。国の垣根がないのは
宗教と文化であります。仏教は外来の宗教であっても、真理の教えであるから尊いのです。
人間は自国の宗教文化に執着しがちです。「大日本は神国なり」の思い上りで戦争を起し大失敗しました。
正月は日本中の神社が最も参詣人の多い時です。敗戦後一時は、無信仰かと思うほど神詣で
はさびれたものでしたが、経済復興をみて、これが神様のお加護だと信じるようになったようです。
本当に信じているのならいいのですが。
少なくとも私共真言密教では、仏様に次いで、神々を仏法守護の神として供養し拝みます。
このことは原則として、仏教の立場をよく理解して、真理の教法が弘まることを念頭に置いて
祈るからよいのですが、神々の神秘的な霊力によって日本が発展してきたと断ずるには、
一寸待ったを掛けたいのです。
それは、密門会の存在とその運動目標が余りに重要であるからです。キリスト教には、
宗教改革がありました。ところが仏教には仏教改革という言葉はありません。それほど仏教が
完璧な教えを骨肉としているからでありましょう。又宗教上の事で血を流すべきではありません。
けれども今日のような進歩した時代は、宗教改革の如き血を流さずして大改革が可能なのか、
仏教者はよく反省して、正しい仏教の解釈が行われるようにしなければなりません。
各宗団の僧でなしに、信徒方が意見を出し合って、その反省によって、自然に仏智が開けて、
超宗派の結論が生まれるものと思います。
しかしながら、この時に密門会の如き提唱がなければ、どれほど多くの意見と提案があっても、
世界宗教たる仏教に一大反省と改革の必要性を感じさせることはないと思います。
仏教の骨子たる因果、輪廻の主役となるのが末那識（迷いの根本）と阿頼耶識の関連であり、
そして阿頼耶識こそ、生命の本流であって、万有はこの第八阿頼耶識を通じて、
無碍の自由世界を得、苦痛から救われるのです。
このことを知らず、唯々、空に成り切るとか、執着を去るとか、或いは死に際して迷わないとか、
安心立命は娑婆の雑事と関係ないとするようでは、社会は了解することはできないでしょう。
これでは社会、国家、そして国際問題を真に解決することは不可能です。個人の悟り救済は
即社会の悟り救済なのです。
ここに密門会の提唱が愈々必要になるのです。仏心不二ということを正しく示すことが、
全人類の福祉に必要な根本理念であり、更に理念は即ち力なりを、否でも認めさせ得るのは、
正純密教のみであるからです。学者の活動もよし、しかし学者一人の宗教上の得心でなく、
社会国家の一々に仏様の教えが必要であることを力説しなければ、心ある人は二度と聞こうとしないでしょう。
卯年にふさわしく会員の皆さんは、平和の中にも誇りを持って新しい友をつくって下さい。