昭和六十一年寅年の師走を迎えました。省みるに、あれもしたい、これも行いたいと思いましても凡下の身に出来る
ことは知れたことです。今年中に、仏教入門書の刊行をと思いましたが、原稿は成ったものの、今後の活用、来世に
及ぶ羯摩（働き）マンダラの素材にしたいものと思いますので、もう少し内容を吟味するつもりです。
私は、死んだ密教でなく、活仏の密教にすることを念願するものです。絵に描いた仏界であったり、美術上の密教に
止まっていてはならず、人類の永い、誤った社会の在り方を照らし、明暗の区別を鮮明に説きながら、こうするのだ
という方向の指示だけでも休むことなく行うのが仏教者としての使命であり、必修の天職でありましょう。小さな運動
の如くでありますが、世にこれ程の目標を示すものは他にありませんから、その実現に向けての技術的工夫と努力には
長い年月を要するでしょうが、それだけにまた尊い行であると確信いたすものであります。会員の皆さん、使命感に
燃えて下さい。
今年を省みると、講演会、密教入門の小冊子、昭和大仏前での瞑想、城ヶ倉温泉での講習会、昭和大仏参詣団体、
大阪センター開設、また本部事務の能率化を計ったパソコンの導入等々、いろいろな事をやって参りました。どれも
皆会員の方々の協力なくしては出来なかったことで、深く感謝する次第であります。
今年の残りの仕事は、正純密教加持の英訳本の仕上げであります。また一方国内用に、既成密教の極致としての
他力易行道を書いたことは、今年の忙しい生活の中で収穫といえるものでしょう。
会としては、年内に福岡支部の結成式あり、名古屋市に東海支部の準備会が考えられていることは、地元会員の熱心
な集まりがあればこそです。本部の力もだんだん充実してゆけば、このような集まりが自然に出来て、会も無理なく
運営されるものと思います。既に支部内では集団指導が円滑に行われているようです。
年内は残り少ないから仕事が出来難いということでなく、一日、否一時間も大切にしなければなりません。
何としても大阪センターの存在が重要で、皆さんの声、要望をよく検討して、実行すべきことは早く行うように
したいのです。
十月の報恩日（法話会）後の懇談会で出た、お加持料が無い人にどう対処するかということは、常に私の考えて
いることです。
そのために、広い礼拝所がなければならないと考えて設けたのが大阪センターです。何を行うにも財力の必要を
感じます。今の一日三千円の料金は普通常識では安い金額でしょう。救いを全て信者の責任にした功徳行とか、
梵行による喜捨、或いは水子霊の供養、不成仏霊の回向料を大きく集めることは、無用な作法です。なるほど、
それなら集まる金は多く、しかも気楽な方法ですが、密門会は、仏説に反したことや、証明のできないことで、
仏教を悪用することはできないのです。玉に瑕というところでしょう。
密門会は、知的水準の高い信仰者の集まりです。貧しい方のためにも、広く門戸を開けておることを、
この際改めて申しておきますが、しかし凡人の哀れさ、他人の貧しさに便乗するが如きは決してあってはなりません。
長年の間には、電話で申し込んで、助けて下さい、必ずお送りしますと言いながら、一言の報告もなく無事を頂いた者
もあります。まあ凡人のことですから黙して過ぎましたが、これは例外として、一応の基本線は守りながらも、
片や実情は充分に承知しておりますから、会員各位の紹介で来る人については信用をいたしておりますから、
安心して紹介して下さい。
よくあるのは、法力を試してから払うというもので、これは信仰上最も救われない理由になります。教法を聞き、
本を読まれると、教えの正しいか、臭いかは判断できる筈ですが、今回敢えて述べたいのは、始めは疑ってもよい、
しかし、成程と思ったら至心に信用することだ、ということです。
この年末から承知しておいて頂きたいのですが、正月の祈祷として大晦日の夜には、除夜の鐘を聞きながら一年
の自己を反省して懺悔行をし、新年に移るや世界平和、仏法興隆の祈りと共に、この聖行に協力する吾等会員の
一家息災と福分の円満なることを御本尊三仏を通じ諸天善神に祈ることです。
そしてお誓い下さい。真言行を重ね、悩める人を救い、その喜びと感謝の気持ちで、入会者を一人、二人と誘う
ことです。密門会会員を一万人台にして、堅実な土台を成したい念願であります。関西にも東京と同様な集まりを
期待して、今迄の静かな流れに今一つ活気を見出し、海外に正純密教の易行道を弘める基盤にしたいところであります。