密門会発足以来、それまで汚されてきた密教を現代に相応した教範であるとして明示して来ました。
著作、会報と、機会ある毎にＰＲしてきたのですが、地方にまで廻れないことと、草創期は内を充実
することに重点を置かざるを得ない事情もあって、時に会員から注意要項として知らされることもあ
りましたが、これまで公にすることを遠慮してまいりました。しかし、最近、憂慮すべき事実を知ら
され、又私自身そういうことに遭遇しましたので、本号を通じて、些か申し上げたいと思います。
会員相互の反省によって、清浄感を強め、一層精進努力して頂きたいものであります。
本会員でありながら、雑部の疑似仏教とも言うべき、山伏系統の教団にも二重籍を置いて、それら
の考えが正純密教とは大差あることを理解してきた筈なのに、又受講の意味を知ることができないば
かりでなく、さも会の世話をする如く装って、内実は自分個人のために密門会を利用する人がいるの
です。
密門会の趣旨はさっぱり理解できずに、講習会でも、講演会でも、自分の売込みに懸命になって会
員内で、得意顔になっていることを、此の度、明白に知ることができました。要するに菩提心のない
ことを自ら証明したといえる訳です。仏教者は、菩提道の精神を忘れず、自己の利を求めず、授法の
師の恩を忘れず、礼儀を尊び、師資の序を尊ばねばなりません。恥を知らない者は、仏菩薩を離れて
鬼神の支配する行者に成り下るものです。鬼神の特徴は、自己の小さな法力を慢心するにあります。
そして自己を主張することはあっても、そこには仏智を指向する求法心は見られません。また、法の
意味を取違え、禁厭を尊び、三密の精神を知らないのです。言わば、中国の道教的なことを好むもの
です。霊の障りを語ることは、楽な集金法になりますから、どうしても機会を作って、障りを話すこ
とになります。霊の障りなどということは、釈尊の経説にも、大師の語録にも絶対ありません。常に
三摩耶戒の精神を忘れてはならないのであり、仏法の精神は、社会民衆に活用してゆかなければなり
ません。
確かに救病法は大切ですが、専門僧でない者が、少々の治病例に満足して、我れ正師なりと誤信し
て、布施を受けるが如きは、越法罪を恐れざる行為です。菩提心なくして、加持法のみを求めるよう
では、必ず魔亊を引くことになります。独り天狗になるのみでなく、必ず家族の中に不運不幸を見る
に至るのです。
寺院住職には、寺門護持の責任と、法門興隆の通念があります。それでも佐伯奨謙僧正の如く、密
門会の理想を尊び、本会入会の条件として、加持を求めることを挙げて、会員を獲得して下さいます
から、真の加持力に加うるに、仏天の加護が与えられつつ、盛んになっていらっしゃるのです。寺門
に修行なされた方は、礼儀、仁儀を尊び、少しも慢心することなく、師資の礼を取られておることは、
全ての弟子の礼を取る者の範とすべきことです。
さて今回の講習会にあたり、はじめて教学のテストを行うのは、受講しても、前述の如き非常識者
の生まれることを予想するからです。ですから、受講証（三回受験したもの）は与えても、教師認定
証は授与しなかったことです。敢えてテストはしなくても、立派な人格者として信頼できる在家の指
導者は、よく承知いたしております。私の胸中をお察し下さい。
織田隆弘の教えを受けた者として、早くから金品を手にした者も知っていますが、受講を重ねるう
ちには、仏性に醒めて、密門会会員として、精進努力するものと期待したのですが、正純密教の看板
を掲げながら、鬼神の憑依によって、我は大師であると自称して、予言にもならない、占いにもなら
ない、綺語を宣言し、売物にする、それどころか密門会会員を廻って喜ばせたり、不安を与えたりし
て、その霊障や、祟りや鬼神の予言めいたものを説くに至っては、到底許す訳にはいきません。
よくよく注意してその正体を見ると、常連信者が少ないということに気が付きます。
以上の如き次第ですから、今回からは講習後に教師認定をすることにし、平素の円満なる常識によ
る、密門会への理解度と実践とをあわせて決定することにいたしました。テスト不要の方もおられま
すが、やはり一応の順を経て、万能ならざる人間らしき判別法を採ることにいたしたいのです。
よく、新しい教団でも、古い教団でも、教師認定証を金で売渡する如き風聞を耳にしますが、本会
は絶対にこのような邪道は採りません。
病気を治せば、新興宗教の開祖同様の夢をみることになりがちです。全国十五万の新宗教法人の教
師のほとんどが、大教団の開祖になる夢を抱いて独立すると聞きます。それに入会者は、はじめから
楽に金を集めようという信念に立っていますから、邪心が消えるどころか、逆に鬼神の業に合致する
ために、一面は救う事ができても、反面災厄を受けることになるのです。雑部密教系の真如苑にして
も、阿含宗にしても、その他、数えきれない大教団にしても、人が羨む程の?大な組織を構えていても、
多くは堕獄の業界そのままで、とても外聞を許すことができない秘事が多いようです。秘密は漏れる
もので、今日週刊誌をはじめ、諸々の出版物に、その片鱗は知られております。
教祖も、悪は悪なりの悪運を担って生まれたから、巧みな宣伝でそれなりの効果はあったでしょう。
しかし、次々生まれる新しい宗団で、平素まじめに善を行う者は、極少数にして、その多くは哀れな
者というべき、はかない夢に生きる疑似宗教家であります。その遠因は占領政策にあって、彼らは一
億白痴化政治の犠牲者とも言えるかも知れません。
幸いに破邪の剣を振るう私は、大きな災難を受けることもなく、お陰さまで今にあるのは、正に本
尊様のお加護を信じております。私に命ある限り、難しい密教をわかり易く説きたいと念じているの
です。最近の中国の気功術や、ソ連の手かざし療法のニュースは、某新興宗教の看板である浄霊も霊
魂説も不要であることを示す、つまり宗教とは関係ないものであることが知られ、幼稚な信者を惑わ
した巨大教団の崩壊を促進させる契機になると期待しております。
いや他教団はどうあれ、わが密門会は、釈尊と、偉大なる弘法大師の教えは、全仏教を密教として
包括するもので、聖徳太子とともに、世界人類の福祉法の基本を明すものです。忘れられた十七条憲
法精神の復興こそ、真俗二諦の大道であることをおしすすめるのが本会の使命であります。