世にお寺さんほど悠長な心境で仕事ができる幸せな人達は他にないでしょう。
富裕な寺院も貧しいお寺さんでも、本堂安置の御本尊様同様泰然自若としております。
その本山で、偉い役付きの権力の座にあり、審議事項の決定権をもつ方々は、
末寺の檀信徒が、他の新教団に入って迷信に酔っているのを見ても、また宗祖を
悪用されても、少しも騒がず、その胆の大きさは正に太平洋の如くであります。
私は常に在俗の立場で、社会の動き、人々の苦難悩みを見ております。
他のお寺さんも同じく社会の実態を調べておられるものと信じておりましたが、
どうもそうではないようであります。
新しい宗教を求めて、在家の立場で宗団の教えの如く修行を実践し、
その教団の収入になる仕事に精進努力してきたが、運が開ける筈の千座行も梵行も何の効なく、
かえって不運になり、治療を祈った病気の親や兄弟が死に、しかも苦しんで落命して、
始めて目が醒めた、というような若い人や年配の人がよく来られるのです。
私のような無学な門閥もない者に、真剣に求めて来た人々が、今迄信じた宗教の事情を
いろいろ話される。それを聞いて驚くことが多いので、小さな義憤心が頭をもたげ、
破邪の不動明王の心が必要だと信じたのです。大日如来の救済の道は、自身の現実をありのまま
に信じ真言をとなえる難行ならざる自然法爾の道であって、その他にないものと信じて、
私なりの拙い文章を本にしたり講演をしたりしてきました。もし邪教集団と言われるものがなければ、
私の勇猛心は湧かなかったと思います。仏教の救いは、現在の苦厄を抜くことからで
なければならないと信じています。同調協力する僧侶がないから、他人を当てにしてはいけない
という気持ちが、私を鞭?してくれました。宗団では邪教に協力する者を厚遇しておりましたが、
私のように孤軍奮闘する者はかえって目障りとなっていたようです。今日迄、各地で、
講演会を聞いても、協力して下さるお寺さんはなかったのですが、それでも聴衆の一人として
来られる方は相当数居られるようでした。
昨年徳島市の講演会でしたが、ここは同じ真言密教の僧でも加持を行う寺は甚だ少ない為か、
加持の話を聞く必要を感じないということでもあったようです。
他宗の方々は、一体加持とはどんなものなのか、迷信でないのか、迷信でないにしても
耳新しい話が聞けるかもしれないとの関心をもったり、新興宗教を論破し、実際に悩みを
救っていると称する織田は、真物か偽物なのか興味をもったりして来会されたものと思われます。
幸いに一人として非難の言葉もなく、二時間の長広舌に中途退出者もないので、
どうやら及第したものと思われます。
私は阿含宗の桐山氏に深い関心と“感謝”の気持ちをもってました。というのは、
氏の行動のお蔭で、私が一層勉強できたのと、不退転の覚悟が、名誉棄損で告訴されて
以来湧き出たからです。次々に求めて来る人々は殆ど阿含宗の元会員です。
聞けば聞くほど同情を禁じ得ません。
書店の中には、阿含宗の本が売れなくなると困るから、密門会出版の書籍は扱わなかったり、
店頭に出さずに返品する店さえあるそうです。今日の出版自由の時代には、売らない
自由もあるでしょうが、それにしてもひどいことではありませんか。幸いに最近では
邪師の正体が知られて、有名書店は公平になったようです。
寺院住職は一国一城の主の気構えがあるために、他の城主のことは意に介さないもののようで、
専ら自分の城を守ることで満足しているようです。しかも事勿れ主義で社交を重んじるのが、
正しいお寺さんの在り方とされているようです。このような世界ですから、私のような考え方
の僧は社交的な集会に出る必要を感じなくなりました。が、私には死ぬ迄に書き残したい
ものがあります。密教にはマルクス主義と異なる社会科学的指導原理のあることを
強調したいのです。菩提心のない僧形は、それこそ偽者です。
多くの在家の方が相談先がなくて、金も使い果たし、落胆して来られます。
阿含宗、慈恵会で育った人が、密教アレルギーになる一歩手前で、密門会の講習を受けて、
真実仏教の光を見い出して、早期に正純密教を会得し、菩提心を起して、縁ある人々を救う
喜びを感じ下さっているようです。邪説に迷う人は、いいかえれば正直にして、
教えを信じる心の持主です。心の清い人、実直にして人を疑うことのできない信心家です。
ただ思慮が浅かったというだけです。そういう人ほど、目醒めた時の苦しさにうち勝、
密門会に入会し、熱心に活動されます。
密門会会員は僅かですが、三分の一は阿含宗と真如苑の元信者であります。
来る九月の青森講習会は、静寂にして、高野山よりも落着いた所で、自然の豊かな恩恵を感じ
ながら行うことになっております。恐らく阿含宗から退会された方々も参加されることでしょう。
そして如来の大悲に歓喜を感じた新しい会員が、感激の感想文を下さると思います。
阿含宗、真如苑、解脱会、或は修験の教、先祖供養の立正佼成会の人々こそ、
仏教は智の宗教であることを速やかに悟り、科学とは別なるものではないことを念頭に
いた密門会に入会していただきたいのであります。最も究極の救いは、理性が行きづまった時、
自身を深く自覚する信によって救われるのです。阿含宗その他の疑似仏教の信者さん方も、
今までの苦労は、密門会によって必ず早く歓喜に変わるものであると信じて下さい。
釈尊は前世で、善財童子として多くの教えを求めて、各師と聞いては訪ねられたのです。
今迄三年五年と無駄な信仰をして、時間もお金も無駄にしたと落胆しないで、
その苦労があったなればこそ、師は邪であっても、求める信者が真心の求法者であったなれば、
逆縁として密門会に入ることができ、改めて正法の法爾に浴することができた、
と感謝されているのです。
血は水よりも濃しと言いますが、はじめから仏教を信じない人はさしづめ水で済度は難しいが、
たとえ邪教でも信ずる気持があり仏名を唱え真言を唱える人にはいつの間にか自然にそれを逆縁
として正法に導入するのが血の法なのであります。仏様の血を頂いた生命であります。
友よ来れ来れ、失敗は成功の元やら、失敗に気がついたら、躊躇することなく本会に入会されよ。