密門会の会員が、新興宗教の様に急増しないのは、総ての願望が成就するとして、福徳、出世、
縁談、就職、開運、因縁切り、超能力獲得等が、万事叶うような宣伝や効能書を吹聴しないから
であります。○○○○をはじめ諸々の新興宗教、明治初年からの○○○にしても、信者の不幸不運
を餌食として、現金のない時には田や畠を寄付させたものです。今日農村の信者から知らされ
ますが、登記謄本では○○○○○○○や本部の名義になっている農地を、子孫が買戻したり、
返還要求をしたりしているそうで、今更ながら驚く状態です。当時の親や祖父母の時代の信仰
の足跡が明らかになる訳ですがこうして改めて買戻しや名義変更の手続きができる人は良い方です。
或は農地法によって、そのまま耕作した小作人は救われましたが、全財産を上納寄附したため、
子孫が貧苦に泣いた人も決して少なくありません。＜省略＞
こんな強制的な方法でできた本部の繁栄の陰の犠牲者のことを思うと、私たち仏教家の努力
不足のために、このような世相を迎えるに至ったことを、痛いほど感じます。
密教は、現世利益を表としてもその根底に自己の利を条件にする信仰を禁じ居るのです。
即刻苦痛を抜くことは、方便としての三密加持の法徳であります。この法徳は会員皆様方が
よく知り、体験されていることでありますが、健康人はそれだけでは満足できません。
随って、財欲成就を説かないと他に有利と思われる信仰を求めることになるのも無理のない
ことです。
ここが大切なところです。仏様は、互いに感謝し供養することを教えます。相互礼拝、
相互供養の実践です。求めることよりも、供養をし礼拝することを教える仏さまです。
供養することにより貪り求める心が、礼拝することにより傲慢な心が一層深く教えられその
自覚により又、貧瞋痴の煩悩が菩提の体となっていくのです。
私たち凡夫は、常に欲得優先の生活をしています。随って、有意義にして、理想や積徳を
説く教えに近づく人は少ないということです。
＜省略＞ 新興宗教必ずしも悪いとは申しませんが、良いことを聞くというそのレベルは、
お寺のお説教を超える程のものではないことを知った時、ああ何と遠回りしたことであったかと、
今更のように目が覚める人が多いのです。お寺の檀家が総じて減じないのがこれで分かります。
古くから密門会会員は、特に効能書のない教えでも、いつの間にか、滅罪行の有難さ、
真言念誦行の尊さを感じ、何かと良い事が多い筈です。改めて静かな幸せな境遇を得、
有難い生活に感謝しながら、迷信に誘われることもないと、心から感謝するお便りを頂くと、
胸に熱いものを感じさせられます。
福分、幸運は、なすべき道を誤りなく行い、横道、邪道に迷わぬことから自然にもたら
されます。コツコツと、毎日我家の仏前に献じた小銭にしても、いつかしら纏るもので、
これを仏前にお供養してくださる方々が増しつつあることは大変ありがたいことです。
このささやかな喜捨も十善戒の中で、特に仏様が教えられている不慳貪に他なりません。
殺生も、盗みも、不倫盗も勿論大切ですが、積極的な功徳行としては、この不慳貪の奉仕行
です。しかもその実践は、いざやるとなると困難なようです。家庭で、或は他家に参じて、
お経を読誦すると、自他を清浄にします。在家仏教には供養行が大事であることをお互いに
反省して、報恩感謝の心を物に移して、益々目に見えないお蔭に合掌して頂きたいものです。
今回、密門会世話人会を開きましたところ、七十名の関東地方の方が集り、多くの提案が
ありましたが、中に会員の供養功徳行をどうしたら良いかという質問がありましたので、
小さな賽銭箱を配布することに致しました。これは、本部側としては大変有難い提案と喜び、
これが普及すれば、会の発展のため、又目的成就のより強い力になることは申す迄もないこと
であります。平素私供は、生活が恵まれていればいるほど、小銭とて無造作に扱っていないで
しょうか。無駄な電気、必要以上の水道、電車バスに代わるタクシー代、それにまだ使える
電気製品を捨て新しいものを買う。家具にしてもそうです。古新聞をチリ紙と交換しないで
ゴミ箱に入れたりすること、きられる洋服を死蔵して新しいものを買う等数々の浪費をして
いないでしょうか。更に大切なことですが、子供達に、物の勿体ないことを教えていますか。
金さえ出せば手に入るという考えを正さねばなりません。物をつくる人々の労力、米が出来る
までの話を、子供に語る親は少なくなったと思いますが、物への感謝の気持、即ち人々の苦心
のたまものへの感謝する気持ちを育てることによって、食事も大切にするし、又健康にも導く
のであります。家計のためでなく、物にも仏心があることにつながります。消費の美徳な
ど存在する筈がありません。消費は、物の価値に感謝することによって生きてくるのです。
浪費は貧困につながり、ひいては国の福祉法にお世話になるに至ります。
その福祉予算が、日本の歳出の大部分を占め、他の生産的な方面の予算が不足する為、
税金は益々重くなって行くのであります。浪費する者は、神社やお寺にお詣りする金を惜し
むようになり、益々功徳なき生活になって病になっても、或は福分を祈ることはあっても頂く
福分を信じる気持ちさえ生まれないのです。功徳どころか、罪業を積まれるのみであります。
供養は人のためにならず、いつしか我身に過分の酬いが与えられていることに気の付くのは、
吾が密門会の法友たちであります。残念ながら折角結ばれたこの仏縁を、おかしな理由で断ち
切ったり、恩を忘れたり、法を喰ったり、又私の弟子になることを利用して私利私欲に耽ったり、
或は大師の霊が語ると称する霊媒的偽装会員も、数の中には生じて居ります。平素『多聞』に
申し上げていることに反する奇蹟談に迷わぬこと。又行力を鼻に掛ける者を羨むようなことは、
絶対に無きようにして、冷静に静観しているうちに、愈々仏教の正師の大切なことが理解
されるものと存じます。
関西本部の三尊仏の血縁も進み、互いに感謝するところであります。何卒血縁供養の好機を
無にしないようにして下さい。