密門会が発足して早十一年、『多聞』を発刊してから八年と四ヶ月になります。
この間、お加持した病者は数千人を数えることになるでしょう。受付表では参千人近くなりますが、
最初は受付書無しでしたから四、五百人が加えられるでしょう。一回きりの人が六割、数ヶ月続けるのは難病の方です。
少なくとも、求めて来る人は病が重く現代医学で希望を持てない人々でした。
一番難儀な精神病でも立派に回復された方々が少なくありません。
どの病気でも全く効験が無いという人は希ですが、結局熱心な参堂者が最高の成果を戴きます。
さすがに信仰心の厚い人は早期に難病が消えることが多い。中でも気の毒なのは、宿命的と思われる方もあることです。
総じて加持は治療でなく信仰の道であるとよく理解している人は効験を戴きます。
でも信仰心はなくても、心を白紙にしている加持の即験に驚喜できることもありますがこれは信仰心が立派に潜在していたので、
病気のお陰で逆に仏徳の偉大なことに驚き、その深い感動が早く救われるのです。
入会して数年の方は、特に自分に病がなくても他の人々が速やかに救われるのを見て、知人友人の悩みを紹介して、
その助かった喜びを共に吾が喜びとしておられるようです。入会して長い方々は、
自分のみならず他人の悩みを紹介して救われたのを吾が信仰の喜びと感じておられます。○○さんはその良き例です。
でも奥様の場合は、何の感応もなく逝かれましたが、安楽な往生こそ尊いものと逆に信心を深められております。
密門会の使命を最近特に感じます。会の発展は広く国民の救いであり、密教の教理は世界宗教の中でも最高のもので、
しかも時期相応の教えであります。密教こそ釈尊の教えの現代に於ける実践道であることが、
最近自発的に入会してくる多くの会員からも教えられ、会長として今迄の消極的な維持の仕方は誤りではなかったかとさえ反省させられました。
吾が会は何ら無理な信者獲得も強制しない、密門会程無理な布教方法を取らない宗教活動体は他に希有と存じます。
癌等難病を治しても信者獲得を義務付けないのみか、一人の紹介者もない人も少なくありません。
以前『多聞』の中で、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」を書いたことがありますが、恩を押しつけることと誤解されることに気を遣ってきました。
折角の結縁ですから、その人の生涯の幸福を護るために、信仰と報恩とは必然的関係であると教えたこともありますが、中々善意に取れぬ人も、
十年間に数人ありました。結局予想の通りその人の不幸を見て残念でなりません。私の未熟さも反省しております。
要は私たちの信仰は、病気を治すことで事足りるのではないということです。
人の生命の尊さを感じると共に、私たちは誰でも老いて死ぬ、病で死ぬ、不慮の災難で死ぬことの覚悟を心からいたしておるでしょうか。
古来、人はこの必然の死を他人の上に見ても、自分の身の上に来ることや、
一家の大切な者に来るという覚悟が出来ている人は存外少ないのではないかと思います。
真実信仰の尊さを持ち生死一如を自覚している人は幸です。密門会は決して信仰を押付けはしませんが、この教えだけは、
正しいこととして説いてきました。そのために、世の邪教邪師を対象として、これを排してきました。
それでも世の多くの非仏教者は宣伝と強引な押付け的布教法で、信者獲得に活動の御旗を挙げています。
「世界人類が平和でありますように」のポスターや角柱が、町角や寺の門前等至るところに立ってあります。
釈尊の教えをいただく仏教徒なら、今更「平和」を利用する教組の野心を看破できる筈です。
平和は特に言わなくても、仏教信徒は心からの平和主義者です。
この教団のスローガンの下の句に「守護神様ありがとうございます」があることを知っている人は少ない。
この教えの広まることの以外平和が来ないという中味は決して見せません。実に巧みと云うべきです。
密門会は会長の話や教えを教義にするのではない。
釈尊と空海、その他の仏教の経典の中から今の世に必要なことを引いて、証明すべきものは実証してきました。
日本はこれから大変なことになります。今迄の貿易を改めて、自動車や、他の電気機械等の輸出を、少なくとも今年を頂点として、
減らすべく計らなければ、必ず諸外国の輸入制限の法律の制定を招くことになるでしょう。
不況は全国に渦巻き、赤旗が林立し、怒号が都会中心に爆風の如く響くでしょう。
その時、贅沢に馴れ、忍耐を忘れた日本人は、どんな様相を呈するでしょうか。
今から私たちは如何なる苦悩が押寄せても元気で生活しながら、仏さまの教えの有難さを感じる心の準備をしなければなりません。
こう申すのも、私が預言者の霊感者だからではありません。常識から判断しても、人間の限りなき欲心と闘争心をあおるが如き、
仏法以外の思想が日本を支配しているからです。密門会の皆さん。一人一人の会員が自らの信心をみがいていくなら自然に会員を導くことになります。
自分の信心がしっかりすれば、自然に人を感化していきます。一人一人が地道に布教活動をしていけば同行者も増えていきます。
実質一万人の会員になった時に、本部の力も付いて、次は一層導き易い方途が与えられるものと信じております。
先ず仏命と申すべき功徳行はあなたの信仰の向上に役立ち、それと共に自分の信仰が一層明るく強く、教理の有難さに一層の眼を開くことでしょう。
病気が治ったので満足してはいけません。密門会の目的は、成仏道を歩むことです。
これから日本に押寄せるさまざまな苦厄を防ぐために、陰徳とも云うべき、正法を一人でも半人でも授ける気持で努力して下さい。
又『多聞』に所感を投稿して下さい。本部への要望、進言をして、会の円満な発展策を投じて下さい。
衆知を集めて、我が密門会を宣布しようではありませんか。