地球上に生息する生物一切、即ち動物植物は勿論のこと、有機無機即ち鉱物、大地一切の生滅変化の流れを直視すれば、
人智の及ぶ世界は限られております。その極く一部を対象とする学問、化学、物理では、大地の中、
或は大空の世界の神秘を究めることは至極難しいことを知るばかりでしょう。人類の歴史は短いようでも甚だ長い過去があると推理されています。
いつの時代でも、過去から現代そして未来を望んで、人類の欲望を充し、人生に必要なものをより多く得ようと、価値高きものを期待して来ました。
その意味で現代の人間世界を虚心に見る時、文明とか文化という言葉が重要視され、発展とか進化とかいう考えを大切にしていることに気付きます。
自然を征服するということまで、人類の偉業として讚えられてきましたが、これは今でも聞くことです。
過去に栄えたエジプト文化、或はアフリカにしても、インカ帝国の夢の跡にしても、今日次第に明らかになって来ました。
遥かに遠い三千年、五千年の過去の文明の遺蹟を偲ぶ時に、それらの廃虚だけではなく、自然までが枯れている、
つまり自然が見られないことを知らされます。つまり自然が見られないことを知らされます。
アフリカ大陸では動物は保護されなければ、死に絶えるだろうと予想されているのは身近な実感でしょう。
森林がなく、野草さえも得難く、よしんば砂漠の中にオアシスがあったにしても、降雨がないと植物が育たず、
随って動物どころか昆虫類までも姿を消しているのです。自然を蘇生させよう、水源を殖やそうと、ダムや河川の造成を計り、
地を殖やそうとしても、人間や牛馬や緬羊、鶏等によって肥沃な土地をも荒らす原因となり、遂には砂漠化せしめることに気がつくと、
科学に期待してきた私共人類はゾッとする思いがします。
米国は大型のポンプで地下水を引いて大地に草を生やし、種類別の野菜を栽培しても、いずれは塩分を含んだ地下水で、
不毛の地となることに気付いて来たようです。日本の米産制限の休耕田どころか、やせた畑地は、投資に見合う程採算なく、
土地の放棄を来しています。新しく開墾し、密林を焼いて、肥えた大地に移り大農式トラックターを導入しても、
結果として新しい農地も枯れ、死の土壌に変化させつつあるのが現状です。
遂に自然農法が指向されつつあるようですが、米国の農家は数百ヘクタールの大農式農家なのに、
その収入が日本の数ヘクタールの農家と同じだと聞けば驚きます。
日本は天与の恵まれた土地であることに、農業を知らぬ者でも感謝しなければなりません。
今日は、人工による食品、人工による農法、何事も人工による製造であり、牧畜にしても、その飼料のことを知ると、人の健康、
不健康を支配する大きな原因は何かに思い至るでしょう。総て不自然の累積です。加えて流通経済も又人工経済です。
ただ欲のための欲を知る時、釈尊の教の愈々大切なことを痛感させられます。
法（ダルマ）即ち自然法爾は至って静かな中に無限の大音声を以て、反自然の果報の恐ろしさを知らせます。
人体の健康も、社会万般のことも、この偉大なる法則を発見して教えた仏陀の心をもって見るべきです。
目先の欲望に煩悩の炎を燃す人類に、如何にして御仏の慈雨広大なることを気づかせるかです。
米国には幸にして禅センターが増設され、農民は禅の心で自然農法を研究実行しているとのことを知り、聞くだけでも有難い現象だと喜んでおります。
空の自然心から更に密教の大無碍の如来の宝蔵を信じる時、加持は単に人間の病を癒すのみならず、植物にまで生命の妙を悟らせるのです。
密門会会員である青森県の○○氏は、林檎園の経営者ですが、昨年十二月の東京講習会で、林檎を採集してから、
色が悪くなるのを林檎の生命が充実すればきっと光沢は良くなるのではないかと信じて、加持したところ、
見事に赤い艶のある美味しそうな色になった喜びを発表されました。
例年スグリと申して、身が多く出来ると、林檎の実が小粒になり安値になるため余分な実を摘りますが、
しかし今年は、林檎の花が少なかったために、六月になっても実が少なく、他の農園ではスグル実がないので心配している中に、
○○氏の林檎園は結実が多いので、実スグリに多忙だという珍現象が起きていると聞いて、○○さんの加持の効果が現れたことを喜ばざるを得ません。
密門会の手で、先ず密教の加持農法を普及したいものです。
加持の心が、自然心に通ずるものでありますから、単に身体や農作のみでなく、社会の不自然さを痛い程感じるのです。
私共に社会の指導者として発言力があることは身お通し、物を通して証されるわけです。
単なるオシャベリならぬ、身業説法が無言にして大きな響きとなることを信じて止みません。