密門会が発足し、『多聞』も九十一号、いつの間にか夢の如く過ぎて、仏命の厳しいことを今更ながら思い知らされます。
日本仏教界の沈滞著しいとは言え、仏教大学は学生を増やしつつあり、教授数も増して、喜ばしい限りですが、その反面、
どうしたものか、実際社会に於て、済世利人の活動に熱意が見られないことは、何か寂しさが感じられてなりません。
一方新興宗教群はチラシ配布に信者を動員していますが、そういう服従心は何から来るのでしょうか。
又信者獲得に厖大な金を投じてマスコミを利用し、更に驚いたことに、選挙には投票依頼の電話戦術、
電話による信者ならぬ、病人探しさえ耳にします。こうして因縁切りや不浄霊の救いを布教するのですが、
こういうことは何かしら異常さを感じます。日本人は子供の頃から、断片的にせよ、仏教話を聞いていますから、
そういう言葉を悪用して、先祖の因縁、水子の因縁、方位侵しの罪、星廻りを説く、勝手な創作が殆どなのです。
私は『多聞』創刊以来。時に応じて、破邪論を述べてきましたがこれでは犬の遠吠えでしかない訳です。
既成仏教談の枠内にあるために、行動が遠慮される点もありますが、何より私自身が素直に仏命の厳しさを感じなかったためもあります。
少しでも仏教の育つ土壌の残っている間に、破邪と共にそれと気がついた人に積極的に手を伸べたいものです。
学者でもなく、門閥もない私の奥底で呼んでいる勇猛心の声に気づかない訳ではありませんが、周囲の事情が熟さない時は、
みだりに分不相応の発願はすべきでないと戒心してきたのです。
ところが去る十一月十九日の第二回大阪講演会に定員に二倍近くの参集者を見たことは、改めて社会が、
正しい救いとは何かの期待を寄せているものと、鈍感な私でも感じない訳にゆかなかったのでした。
そして嬉しいと思い、御仏に感謝したのは、私の蒔いた種子がそれぞれ芽を出し、受講者の多くが、私に続いて、
医学上不治とされた難病を短期間に治しているという現実であります。
多くの宗教の盛衰の跡を見ても密門会程の立派な成果を知ることはないと言ってもいいでしょう。
これまで私共の場合は、なるべく病気治しの新興宗教同様に誤解されることを警戒し過ぎた嫌いが強かったようです。
会員の皆さん、今年は会員各自が、いかがわしい街の宗教に惑い因縁論屋や霊障論に迷い、魔事を払の教と妄信する人々に、
優しく気品のある説得をして下さい。
今年から各県の主要都市に、グループ造りをする前段階として、世話人の依頼をしますから、地域内の同信者の勉強会を開いて下さい。
たとい三人でも一所に集ることができれば良いのです。主要都市の場合は、世話人が五人以上結集すれば、会場を借り、
講演会を開くことが出来るでしょう。私も必ず打ち合わせに参画します。
幸に、東京総本部の外に、青森本部、関西本部〔西宮市〕が出来ましたので、行く行くは、九州、中京、北海道に本部を開き、
その他に支部を指定したいと思っています。ここまで来ると会員同士から良い智慧が生まれるに違いありません。
人を一人導けば大変気持の良いものです。無理な押付けではなく、座談会で良いのです。
現代の医療制度と宗教法人法の続く限り、難病は増し、悪意ある医師が露骨に、人間を換金術の対象にするでしょうが、
このような時には密門会の一層の活躍が期待されます。
私たちは唯単に身病を治すのではなく、心の迷い非真理の妄想を防ぎ改め、物も心も成仏させて、大乗国に相応した、
日本国造りに努め、世界の範たる理想社会を築きたいものです。と同時に、他の宗教をも優しく迎えて、
密教は最後の目標であることを悟らせたいものです。
会員の皆さん一人一人が在家仏教界の世話人、準布教師なりとの自覚をして頂きたいものです。
その意味でも、講習会や法話会を受講し聞法して、良き先達としての教義を高めて下さい。親鸞聖人は仰せられました。
善人なをもって往生をとぐ、
いはんや悪人をや。
私共は自分の罪深きことを深く感じ、懺悔行動を貴ばねばなりません。私共は大日如来さまの特別大きなお慈悲を頂いておるのです。
そのご恩報じを忘れて怠っては畜生にも劣ります。死んで障霊となるどころか、地獄、餓鬼、畜生道に堕ちないようにしたいものです。
幸にして会員皆様は、無限の大悲大日如来に加持されて、成仏神変の仏様に結ばれています。このことを改めて感謝しなければなりません。
そして救われた体験を土台にして、新しい友人との結縁に協力して下さい。