九月三十日の法要を前にして、地元の方は勿論、各地の信者方は天候を心配し、秘かに晴天を祈っておられたと思います。
天の御加護か、夜中の雨は午前三時に止み、三時半にもなると満点星を散りばめたようになりました。思わず合掌したものです。
朝七時から遠来の参列者が続々到着されました。密門会会員の御顔も次第に増して来ましたが、○○団長のバス到着を待って、
法要職衆の集会所に時間ギリギリに向った為、一々御顔を拝しお礼を述べられなかったのは残念でした。
遠方からよくこの盛儀に馳せ参じて下さり、皆で読経の声を高らかに響かせ、稲山会に御仏の声をみなぎらせたことは、
恐らく互いに生涯忘れられない感激であったろうと思われます。
盛儀に当り、祝辞に名を呼ばれた○○青森県知事は、まことに失礼ながら代理かと思ったところ、御当人が登壇され、
意外の感に打たれました。後で聞けば、祝辞を内ポケットに用意されたのに、如来の御もよおしあってか、急処型の如き祝辞をやめて、
堂々と即席の挨拶をなさったのは、式典の祈りに相応したものと、参集者一同深い感銘を受けたことでしょう。
○○青森市長の祝辞に続いてなされた青森県遺族会会長○○さんの祝辞は、さすがに遺族会を代表する女性らしく、静かな口調の中に、
これ迄の私の苦労をねぎらい、また私も知らなかった、陰口の障りが少なくなかったことを語られましたが、
英霊の加護を信じて来られた信念が端々にうかがわれました。
発願者四人の方の祝辞に心から感激致しました。祝電の披露については、前日到着の分二十通を係の人に渡すのを忘れましたが、
特に権威の筋に求めた訳でもないのに、多くの国会議員から祝電も寄せられました。
この祝電に示されるように、議員諸賢に真実、宗教に関心があるのなら、大いにめでたいことです。
この先生方に働いて頂くには、全仏教徒が強くならなければならないので、そうでないと所謂お祭りで終ることになります。
それではならないというのが昭和大仏基壇内の三十六枚の額と、外廊の六波羅蜜の大きな〔横四米、幅一米〕額の金文字です。
三十六枚の申込に遅れた方々の御名前をこちらに鋳字しました。次の方々です。○○殿、○○殿、○○殿、○○殿、あと八名の希望者をお待ち致します。
今回の式典を昭和大仏落慶開眼式としないで、単に開眼式法要としたのは、御尊像のみ完成したからです。
蓮台も漸く半分は鋳造されたものの溶接工事は残り、前日午後二時に臨時の着色を終った直後から雨となった訳です。
幸に前方からは蓮台完成の如く見えて、全参列者から、素晴らしい雄姿、有難い微笑の慈顔と讚えられました。
横からの尊顔は崇高さを感じ、前方から拝むと、大仏様が近づく感じがするとも言われました。
五ケ年の工程で、ひたすら万人の仰ぎ讚える仏王の貫録と、慈しみの溢れることを期待し、仏師、工人の妙技の与えられることを祈った御利益であると深く感謝するばかりです。
この感想が市中に拡まったためか、晴天の日には千人余りのお詣りが続いておりますが、
事情を知らない人は、予定の寄附金は完納されたものと即断なさいます。これは誠に危険なことです。
更に完成に向って努力し、必要な施設を建造しなければなりません。それには地元民を始め、有縁の方々の関心と布施心を要するのです。
それにつけても、今迄の困難な募金運動に協力して下さった密門会会員の皆様には、どうお礼を申し上げてよいか言葉を知りません。
当日の挨拶に申し上げました通り、昭和大仏は決して日本一の大きさを誇るものでなく、如何にして正しい仏法を広めるかに配慮して、
心から祈り得る尊像を願ったのです。この心魂こそ奈良、鎌倉の大仏に勝るとも劣らぬものであると自負します。
時の権威、財閥の手を借りることなく、又観光業者の合力も特にない状態だったのは、私の不徳の故かもしれませんが、
これこそ尊い浄財で成った尊像であることを意味するものと胸を叩いて誇りたいところです。
この感激の日を伝えるに当り、皆様に御報告したいのは、医事評論家の中山道治先生の新著『真言密教の奇跡』であります。
この本は今後の会員諸士に強い希望と自信を与えるものと、敢て断言します。密門会でも扱っていますから、どうぞお読み下さい。
これによって、吾が密門会の弟子として、一層積極的に働き、先輩法友に続く決意を固めて頂きたいのです。
そして、正しい密教の先導者の仲間入りをして、誤った西洋医学と邪教に悩む人々を救って下さい。
しかし全人類と言うも一切衆生と言うも、私共一人一人を措いては成立たないことを忘れてはなりません。
献碑なさった方、当日参加された会員に合掌を以てお礼申し上げます。