夫れ熟々惟るに、昭和大仏造立の聖地を稲山公園地域に定め、工事に着手と共に結縁を全国に求め、仏法興隆の同志を結集して、
茲に尊容を仰ぐに至る。省るに、仏法伝来するや聖徳太子は大乗の奥義に立ち、十七条憲法を制定し給ふ。
是れ人類生活の基本、万国の規範にして、仏法なくして世界平和は期し難きを示す。
爾来千四百年、政治、教育、社会の要路者は未だその理を悟ることなく、今にして正法復興せざれば、何れの日をか期すべき。
国民に仏心浅くば、善政、卓論も頼るべからず。吾国の歴史は即ち仏教の歴史なり。
甞て天皇、親王相次で入道して、朝に夕に天下泰平、万民豊楽を祈り給ふ。かかる優秀なる日本文化の淵源を忘るべからず。
明治維新の大業は、世界に稀なる近代化を進めたるも、天皇、皇族の入道を禁じ仏教を軽忽にす。
斯の如き反仏教の勢は国家千年の悔いを残し、世界平和の希望を失なはしむに至る。
加え、今次大戦後叫ばれし自由たるや、戒めを知らず、人格の尊厳を称ふる成仏道に悖ること甚し。
信教の自由は、邪教の跳梁を許し、妄想幻惑の魔力を、仏や神と誤信せしむ。今にして是を正さずば、如何なる後悔も及ぶべからず。
如来の説法は、三世の因果を大本とす。先師先徳無我小欲に立ち、足るを知る。己を空しうして大衆に奉仕し、争を抑えて忍を説き、
恩を忘れず施しを惜しむ事なし。五戒十善を尊んで六種の菩薩行に励む。諸人亦之に従ふ。
鳴呼今や世相荒廃して、人心乱れ、自らを律する心なければ自縄自縛して苦しみ悩む。
子弟礼を失ひ、暴力非行増すも故なきに非ず。かく見来れば、西に仏都ありと雖も、名刹に沈んで世の燈明たるに耐えず、
かるが故に如来、居をこの聖地に定め給ひ、昭和大仏として顕現せしめ給へり。是れ偶然に非ずと言ふべし。
今顕密大徳を屈請して、昭和大仏開眼の秘法を厳修す。乞い願はくは如来の願力により、我等をして速疾に迷ひの生を離れしめんことを。
伏して祈りを奉る
奉為天皇陛下玉体安穏
為世界平和国土安穏
為仏法興隆教育改革
為殉国英霊追福菩提
為第二次世界大戦各国犠牲者菩薩
為昭和大仏献碑献額者二世功徳
為昭和大仏納経者福智円満
為青龍寺境内元地権者各家先祖代々菩薩
為昭和大仏参詣者減罪生善
為三界万霊乃至法界平等利益
昭和五十九年九月三十日
全仏山 青龍寺開山 伝灯大阿闍梨
隆弘 敬白