『密教祈祷の秘密』を刊行して第一回講習会を開催したのは十年前のことです。
これが密門会の母体に当りますが、その後、会報『多聞』を発行するに至りました。
この間二十五回の講習会を開き、諸病苦を治す即身成仏道の加持感応を伝法してまいりました。
既に伝法の要点を会得して、有縁の人々の悩みを救済し、信仰を植えておられるのは、僧侶は勿論のこと、在家のお方にまで、普く及んでおります。
このようにして、いつの間にか私も古稀を数えるようになりました。
お陰で若い時に予想された短命ということもなく、至って元気で日々の三密修法を勤修して、毎日のように難病者快癒の報告を頂いております。
昭和大仏も今年末にはその偉容の大部分を拝める工程になって来ました。
今年は大雪のため一ヶ月余の後れを余儀なくされ、皆様にも御心配をかけましたが、鋳造は順調に進んでおります。
我が密門会会員も、受講される度に、真言行、懺悔行と共に心の進境も知らず知らずの間に進み、徳を積重ねられていることと信じております。
密教と云えば、難行苦行をし、種々複雑な行法を修した専門僧でなければわからない摩訶不思議な法門で、
とても一般在家の入れる道ではないと従来思われてきました。それでは永遠に在家と無関係な法門で、何の為空海が御苦労されたかわからない。
密教こそ在家の行じられる成仏道でなければ立教の意義がありません。
従来の在家という教えられる立場から一歩踏み出し、今度は皆様が各々勇猛心を発して、自分は大日如来の御慈悲により、
社会奉仕の化他行をする、即ち正信によって世の人々の苦悩も自分同様に消せることを深く信じて法友を作ることを決心して頂きたいのです。
私はいつまでも凡夫で、他人を救うなどと大それたことは出来ないと、遠慮しているのでは、死んでも化他行は行えないでしょう。
そこで、三度以上受講された方に特別伝法を施し、菩提心堅固な方には又御本尊の印可の印に、
『正純密教を語る会』の板看板を差上げることにしました。これによって、在家密教の自由座談会の家を宣言して、
協議も重ねて貰おうというのです。要するに密教の在家運動として、簡単な同行組織から発足し、その後の御同行の増加に随って、
組織を広げていくのが無理のない、堅実なる発展を期されるものと、信じるに至りました。
来る六月四日五日の講習をふくめて、合わせて三回以上の受講なさった者は、本部の特別講習を受ける資格を得る訳です。
今日迄受講者は三百人近くになりますが、如来の霊徳を正しく実践して、先ず有縁の人々を救って下さるようお願い致します。
これを確実に積み上げて、既成寺院とも協調し、成長して頂きたいものです。
世界人類は、いよいよ共通の真理に基いた教を探求するようになって来ましたが、それなのに、日本の仏教界は惰眠を貪っております。
一見勢い盛んな宗教団体は、巧みな迷信による脅迫や、霊魂教が多く、これを知れば知る程、今こそ弘法大師空海の、
大日如来の神変加持法は難行苦業ではなく、絶対他力の三密加持の易行道であると意を強くします。
しかも在家のできる最高理想たる無相の三密であるとの獅子吼唱導せねばなりません。
この意味に於いて過去二回受講なさった方は来る六月講習会には万難を排して参加されるよう期待しております。
「正純密教を語る会」の家には、真実宗教を求める人々が訪問し、互いに仏教の教えを喜び、或は新しい宗教の紹介や、
教義を聞くことによって、一層勉強の意欲が増すことでしょう。何卒志在るお方は此の際一日も早く、
この「正純密教を語る会」結成の為日頃から精進し準備されることを念じます。