会員の皆さんには、正しい信仰の在り方、最も発展した仏教である大日経と金剛頂教等の解説については、
私のような者が述べなくとも専門の学者がいて、大学や著書で教えの要点を述べておりますが、なかなか一般仏教徒には理解が難しく、
随って信仰心を養うところまでまいりません。学者には信仰がないと云われるのは、宗教者として何か釈然としない思いがします。
これは遠慮なく申すと、学者というものは経意を正解していないからだということになるようです。
茲にわが密門会が重要な使命を持たざるを得ない理由があります。
私如き無学無識の者は、真言密教の宗祖弘法大師空海のお著書と、その事蹟を〔伝説でなく〕拝しますに、そこに太く貫くものを感じざるを得ません。
空海の教は、多くの密教経典の中から、現世利益を説かれる雑部の経典を整理して、大日経、金剛頂教即ち両部の経典を中心に選び取られたものなのです。
要するに様々な御文章の中に即身成仏道をにじみ出させておられるのです。
修行精進の大切なことと共に、詳しくは三密を一つ一つ分けて述べられても、常に意密が主流をなしており、このために無相の三密が目的となって、
特に意密に結ばれておるのです。この心に於て、大日経が成仏神変加持経と経名にあることをこの密教の主題として取上げ、しかも平生の修行心は、
絶対他力の信心であると結論させられております。この信心を、密教では、観想という言葉で表現してきました。
近頃はヨーガの瞑想という言葉を多くみますが、空海が後世に厳しく戒め、
重要視された三味耶戒を拝察いたしますと少しでも外道とまぎらしき表現は慎しまなければならないと存じます。
重要なのは『観』です。この観は、成仏への近道となるものですが、又、本尊さまの意を体得して、衆生済度の三密を実行するに当っては、
『観』の活作用が示されています。観法こそ密教者が始終に留意せねばならぬことで、他の修行精神に至っては、他宗と特に変わりがなく、
共通のことが多いのです。
この『観』は密教のみが説く特徴であり、これに努力しなければ、即身成仏は空理空論に過ぎず、形骸仏教となってしまいます。
この『観』が正しく実行された上での宗教儀式となれば、そこに活き仏の姿が現出することになります。
即身成仏の教理の実行があれば、当然教の如く現世利益は現れるべきものであります。古来密教が他宗と異なるのは、
現世利益については神霊や天神或は菩薩から頂くこともありますが、この自身外の神々から頂くことは大変困難が多いものであるのに反し、
この『観』即ち三密加持から生れる仏力は速疾に現れることにあります。この『観』の重要性を皆さん常にお忘れにならないようにして下さい。
癌にしてもリュウマチにしても糖尿病にしても、その他数々の難病とされるのは、今の西洋医学の誤った診療では、治せないばかりでなく、
反って毒禍を招いて不治にしてしまうのです。それが速疾に治るのですが、会報に一々治った実例を出さないのは、宣伝文書と誤解されるからです。
昨年十一月、大阪千里の読売ホールでの講演会に来聴、信心を決定された○○さんは、夫が肝臓癌で、
医師からも見放されて退院するという悲観のドン底、しかも十数年来の糖尿病、その他若い時から結核で悩んでいるという方ですが、
お加持を受けて、三週間にして、用事のため三時間も外出、一ヶ月後には、八時間も歩き用を足しておられます。また京都の○○さんも、
御主人が前立腺癌で血尿が出、入院したのですが、一週間で血が薄くなり、二週間で止まり、二ヶ月目に自宅に帰り、
三ヶ月目に退院する程好転したことです。広島の○○さんは御主人の肺臓に水が溜まっていると、求めて来られたので、直ちに加持に入りました。
開腹したところ水が去り、その代わり血管には癌ポリープがゴマ粒の如く多かったのですが、手術不可能とされた重症も、
必ず救われますと申し上げた通り、無事退院を許されたのです。八代市の○○さんの骨髄癌にしても好転の報せがあり、全快祝も近いものと存じます。
Ｔ女史は癌で入院した日に来られたのが、即座に大霊験を頂いて、三日で快方に向ったのに、家族や外部の義理で、
大病院にベッドを取ったということで、泣く泣く入院なさいました。抗癌剤を点滴の中に入れられたのが悪かったのか、髪の毛が抜けてしまいました。
抗癌剤を用いない約束が破られていることに気がついて、十本の注射を五本にした時、実父の抗議によって、退院して、
見事に治ったと喜んで来られたということもあります。
これらを一々公表すれば人は反って嘘だと云うでしょう。しかし、会員の皆さん、講習を受けられた方には信じていただけると存じます。
癌の疑いで、○○病院から○○病院（癌では民間第一の病院）へ移された著名学者の場合、その息子さんが求められ、
これに対して特に手術も抗癌剤を用いない努力方法を期待、数週間後無事癌の心配なく一ヶ月余りという短期間で退院して、
新しい大学へ赴任されたのです。名士というても、信仰は別であります。いかに学者でも宗教を知らぬ人が多いようです。
殊に現世利益の信仰を迷信とした、真宗系の説教がいかに大きな誤りを招き、しかも迷信以下の西洋医学の餌食になって来たかを知る時、
この大日如来の大悲の世界を知らないことは真に残念なことです。同じ無常といっても、
経典の真意の取り方によって大変な誤りをしておることを知る訳です。阿弥陀如来の四十八願のうち十七、
十八願以外は皆現世利益に関しないものはありません。源平の争乱後の悲観すべき時代故に、現世を否定し未来にのみ安楽を置いた信仰は、
確かにその時代には大きな救いだったでしょうが、果して科学時代の今日、それだけでいいものでしょうか。仏教には問うべき価値はないのでしょうか。
今こそ密教再興の秋であると云わねばなりません。余人に云うのではない、わが密門会の責任なのであります。