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年頭に当りて
昭和56年1月
織田隆弘
 第四回の年頭所感を以て新年の御挨拶といたします。

 昭和五十一年第一回の密教加持の講習会を機縁にして生れた密門会と『多聞』紙が、百数名の会員から今日千名を数えるのに、 決して無理な勧誘をしたり、人の弱点を知って押売りして会費無用として入会を計ったりしたからではなく、始めから明らかに、 信仰は平素から、正しい仏教の知識から、持続して生涯の幸せを頂く為の会であり、会報であると申して来たのが、 よく領解されたからでありましょう。真に不敏の身ながら、日々皆さんと同じく懺悔し、如来の加持力に感謝し、 如来の大悲方便にて出現せられたる諸仏を拝んで供養の喜びを頂いております。

 生活はなかなか安隠たり得ないのでありますが、これが人生でありましょう。 新聞テレビを見ても気の毒な犠牲者を出す悪質犯罪が続くことは、真に寒心に堪えないことです。 これ程教育が発達し、世界第一の水準と称されながら、どうしたものか。現代は、明治、大正、昭和戦前の時代を、遅れた、 そして暗い体制、自由なき時代、封建性の多い時代と批難するのですが、この犯罪件数にしても、その内容にしても、比べてみると、 どうも現代の方がおかしいのではないか、と思われてなりません。

 また福祉が進歩した筈なのに、私が常に指摘して予想したように、政府が積極的に医療機関にメスを入れなければ、 全く医事医療の世界は、一般人の立入ることのできない聖域となり、伏魔殿と化するであろうというのが、不幸にも適中して遂に、 富士見病院事件として、その一端が世に照し出されたのでした。飲まなくてもよい薬を投与せられ、切らなくてもよい大切な内蔵を切除され、 調べる必要のない身体を苦しい精密検査の機械代の支払い材料にされ、長日を無駄にしました。 それに、今日の鈴木内閣の大仕事たる財政再建の主たるものは、 前年十兆円から一ケ年二兆円の増額となった医療費のことを忘れて解決のできる問題ではありません。

 私は昭和五十一年の『日本再生の鍵』の中で、今回の発動で知らされたようなことを既に予告しておきました。 神戸新聞に栗原先生の書評が掲載されましたが、そこには、

 「あのやさしい顔の師が、このような強烈な表現をしています。『日本の厚生省には大臣が二人おり、一人は武見医師会会長である』云々」

とありました。私は真を突く書評だと思って大笑したものです。 しかし、その後も推測を裏付けるために、会員の方々の語る、病院に在った時の模様や看護して感ずることを聞いて、 成程、私の予知したことが不幸にも適中していることを確認するのでした。公憤を禁じ得ないのですけれども、これは仕方のないことで、 法律的に、到底公然と指摘できないのです。

 最近寄せられた元看護婦さんからの便りに、御自分の病気で膝が悪く座れなかったのが、札幌講習会に参加して、 座ることができた喜びと共に、今迄病院に勤務して医療が恐ろしい逆効果を招来している事実を見てきた悩みから脱出して、遂に退職して、 今は密教の信仰に入り、感謝の日を送って、更に新しい希望が湧いたという報告があり、傍々懺悔行の巻数表を第二回の懺悔行に入りたいとのことでした。

 このように、実際に病院で西洋医学によって行われている不可解な事実はどこから起るかといいますと、 これは日本の経済発展と福祉国家讃美の産物であって、この中には少しも精神美というものが感じられないのです。

 尤も、ここに言うのは医師全部のことではありません。私の知人の多くの医師は入院室を持たず、 看護婦一人で、或は奥さんが看護婦、薬局、会計の仕事をして、経費を掛けないから、無理なゴマ化し診察やゴマ化し会計なしです。 こんな、活仏の如きお方が十人も居ります。これが真の医師の在り方ではないでしょうか。

 現代人が、機械化と科学に寄せる期待と信頼は、迷信邪教以上で、すっかり信じ麻痺しているようです。 宗教は時代遅れの遺物と軽視していながら、その実邪道医療の妄信者になっていないでしょうか。 先日も、既に私が本に書いた注意、コカ・コーラ不買運動を某大学の学生会が始めたと聞いて、やっぱり目覚めがきたかと思ったものです。 最近登校拒否学童が増しているのも、カルシューム不足の生活が、子供の受験勉強で疲れた脳に影響を与えているということは、 お母さん方の勉強不足から来ているのです。これも平素私の提唱警告している通りです。

 私が、今の繁栄は無駄の上に立った危険なものであると叫んで来たことが、段々と国民の目覚めと、政府の目覚めを呼んだのでしょう。 でもまだまだこれから大仕事が待っているのです。厚生省の高官と製薬会社の癒着、更には食品添加物の許認可の問題に、 もっと鋭いメスを入れることは、邪教に対すると共に行われねばならぬことです。

 青森市に建立する昭和大仏は、このような大切な問題を照見するためにも、 また密門会の存在をシッカリ示したいためにも必要であることを述べて、会員諸賢と共に破邪と正法の光を進め、 今こそ邪教から目覚めて、正しい密教の正法を受法すると共に、今までの誤りを懺悔して再出発することを祈る次第であります。