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加持祈祷の即効性
昭和55年2月
織田隆弘
 昨年十一月末から、癌に悩むお方のお求めが相次ぎ、数人受付けましたが、中のお一人は手術で卵巣を切除し、その後の再発転移が著しいお方でした。 手術前に制癌剤をもって療養したために、大切な臓器の機能が不完全になっているのか、治癒力の復活が思わしくなく、 真に残念な症状のお方もありました。一度入院して制癌剤を用いた時の再発は、 私のような未熟者が気の毒に思って施法しても反って法徳を傷つけることになると思い、これからはお断りすることにしました。 けれども、御本人が生も死も如来にお預けした心境になると、言い換えれば真言念誦によって如来の大悲と自然の法則に委せ得た心境に至ると、 正にこの人こそ成仏道の最勝の因縁だと信じております。

 充分に満足出来る事例もありました。食堂癌で手術をしようとしたが症状はひどく、切除しても成功は難しいと判断して、 そのまま切除せずに縫い納めた豊橋の人があります。万に一つもと思って十二月二日に奥さんが代参されましたが、幸に私は自信を以ってお受けしました。 二十日頃電話で容態を尋ねたところ、大変良くなって心配なくなり、近く退院しますとのことでした。加持する必要が無くなったということです。

 私は大いに喜ばしい快癒の実例と思いましたが、それにしても早過ぎるものと考えられ、翌日再度電話をしたところ、 先に息子さんが電話に出て、本人がここにおりますとのこと故、本人に電話に出てもらったところ、 大変元気で、仮り退院した程良くなりましたということです。 それにしても油断しないようにと申し、引続き加持法の申し込みをすべきでないかと申したところ、 本人へは病を秘していたとのことで、結局十五日間の祈りを二十日を続けて終了となりました。再発のないように祈るや切でありました。

 このように制癌剤を用いない場合は、内蔵諸器が傷ついていないためか、実に早く治るのが多いようです。 新潟の○○夫人、○○夫人も同じで、殆ど一ヶ月以内に癌が無くなったのです。

 ○○さんの場合は、お友達が私の本を読み信仰なさり、依頼されたのです。乳癌でしたが、私は手術しなくても治ると申したのですが、 手術条件の入院で遂に切開したところ、細胞には癌が発見されなかったとの報告です。 この友人こそ救いの仏であった由です。甲府の病院では、最初の診断に基づいて、切開後も放射線療法をして万全を期した訳ですが、 信仰のない人から見れば、治っても医療のお陰だと思うに止まることが多いのです。

 北海道の○さんも癌の診断で驚いて、電話で尋ねて来られました。申込を受けてから、遠隔だけに不安で、 手術すべきだと親類の方々に云われるので迷ったということですが、私の勧めを受けて、御主人と二人で上京され、 五日間の参籠で大きな自信を得て帰られました。 一ヶ月後の今日益々壮快にて、七分通り以上の治癒と信じておるとのことですが、体質上根治までに数ヶ月を要するでしょう。

 僅か三日間の祈りで、最も悪性中の悪性の病人のお方の併発症の一つに、胆嚢が普通人の四倍の大きさで、 癌研の医師も開いてみたいと言っていたそうですが、お祈りして四日目の報告の電話で、本日の検診によると、 四倍もあった胆嚢が消えて見えなくなり、病人の体調が著しく快調ということでした。尤も奥さんは毎朝六時に御堂へ参入される熱心さで、 ご本尊さまの御大慈悲に恵まれたものであると信じるところです。何分老齢期故に今後の成果を祈り続けたいと思っております。

 又いわき市の○○さんの奥さんの熱心な要請もありました。 御主人が膵臓腫瘍で三ヶ月の寿命と診断されてから、溺れる者がワラをも掴む思いで某寺の出張相談を求めたところ、水子の供養で治るとのことで、 六百三十日分の前金六十三万円を取られて、二ヶ月も経たのに悪化の一方で、心配の余り私の方に見えたのでした。 私は水子の障りを無視して加持したところ、一回一回著効を見て来ました。二日目の報告で尿が黒い色で心配しているという電話でしたが、 それは悪いものが排泄された証拠で必ず治るでしょうと申したところ、五日目には全く全身的に快調で、本人は治ったと同様であると喜んでいるとのこと。

 その他咽頭癌、胃癌等も好転しており、何れ三ヶ月後の根治の喜びを本紙に掲載されるものと思います。 その他十年間悩んで来た、手の指の変形したリューマチが三回で好転したという、女性の喜びもあります。 空洞三つの肺結核が快調になり、また精神安定剤から抜けられない主婦の悩み、或は息子、娘の脳に関する悩みから解放されたという感謝も来ております。

 これに反し、本人及び家族の信仰が真実でなく、治れば信仰から離れて、治療家に掛ったような態度の人は、 今一つ憂を残します。癌は本人に秘す程悲観材料の最たるものでしょうが、治ればその危険度を忘れる人があるもので、再発しなければ幸ですが、 人間の生身は無理すると再発が考えられるので、本人のためにも、法の宣布のためにも、甚だ惜しまれるところであります。

 密門会は、大切な此の世に生れた機会に、凡人そのままが正しい智慧と信仰によって、 人間であり乍ら人間以上の最高の覚体を体験しようという密教の本旨を闡明にするのであります。

 随って、この受け難き人間の生を得て、更に遇い難き密教に遇ったことを、単に病気治療の精神療法の如く解釈して、 表面上の挨拶で別れることは、真に悲しいことであります。

 今年はこの大切な誤り易い大事について特に注意し、菩提心を正しく育てて、人間最高の果報者になっていただきたいものであります。