私が去る五十一年刊行の『日本再生の鍵』で最も力説したのは、日本をはじめ先進自由主義諸国の、
国民の経済と生命体を不具化する内蔵切除手術の多いことと、その原因は西洋医学に立った医療制度に
あることで、これらによって内科医療が退歩して、結局国民の支払う十兆円という医療費が如何に無駄
であるかという点です。しかもこの医療費が年々二割の上昇率をたどっていることを知ると、国民経済
に大きな圧迫をもたらすものであると言えましょう。国の公式の発表では国民一人当りの医療費が
七万五千円となっていますが、これは民間療法や売薬を計算に入れていない数字です。十兆円のお金を
医師の数十五万人で分けあうわけですから、医師の多額納税者と脱税番付でニュースになることは当然
なことです。
さてこの私の書いた『日本再生の鍵』を、今テレビやラジオで人気を集めている・・・・氏に
送ったら、大変喜んで礼状を下さいました。それから・・講演の医療費の取り上げ方が厳しい追及
と遠慮なき批判指導になったことは、会員の皆さんもよくご承知のことと存じます。
評論家はこの数字を以って制度の探求をするのですが、私の論じた問題点は単に医療費を多く要
するというのみでなく、仮に制度の充実と医療費の増加によって医療設備が進歩したとしても、
結局今日の西洋医学を正道とする医療思想と制度の下では、難病を治せないばかりか反って造病に
拍車をかけるとしか思われないのであります。勿論医療機関に求める前に、食生活を改善したり
内科的予防医学を進歩させることも重要ですが、厚生省も医療界もこれに対しては全く消極的であり、
また関係法規のためか、実質的に治す力も学問も皆無に等しいと云われるのも止むなき状態です。
漢方医学に長所があっても、その効果に対しては医師界も厚生省も顧みないように見受けられ
るのは、大変残念なことです。私は・・厚生大臣に対して本を送り、強弁家の・・・・を屈伏
せしめるには最もよい方法のあることを建白しました。それは明治時代にならって、漢方医制度を
おりこんだ法律を制定するよう言ったのですが、医師界との腐れ縁から、取り上げられませんでした。
医療費は高くても治してくれるなら不平も言えませんが、難病は勿論未だ難病となる前の軽い
病気でも、診療を永年続けて結局薬禍のために慢性病となり、遂には不治の難病とされるのです。
例えば腎臓病を治せないで人工腎臓の透析の費用を国費で支出するとか、腎臓移植のため腎臓銀行
を法律化するかという方針のようです。確かにそれなりに理由はあるでしょうが、私たち正純密教の
目から見ると全く歎かわしいことです。なるほど、現在この腎臓透析療法を受けている患者には、
一応の福音ですが、これが乱用されて、腎臓病にはこの治療よりないものと妄信している現在の
国民が、医師の判断一つで人工腎臓を取付けられるようになったら大変なことです。
私は、このような狭い視野で問題を処理する医師の世界を絶対視する妄見を一日も早く破って、
真の医王道は真言加持の神力であって、そこに大きな救いの大道があることを強く主張し、そして
同じ信仰成就の友を多く世に出したいと念願しております。
私の著者の中に、医師が病人を長く治療しながら、結局治せないで死亡した時は、その治療に当り
法規通りの診療費を受け取っている場合は、当然のこととして技術費は返済すべきであることを書いて
おきました。診療費は治療費の精神にして、その目的を達成しない時は、価値のないものですから、
料金としてその診療報酬を請求して収入とした医師も病院も、少なくとも香典としてでも返却す
べきが、倫理道徳である筈ですが、どうしたものか、国民は、医師とは聖職者にして犯すべからざる
如き見解でいることは、これこそ医師に反省を与えない最大の原因になっています。
病気が治せなければ、その価値は半減します。もし商人や製作所が大切な商品に傷や欠陥を発見
すると、当然他の良品と交換するか、交換品の無い時は返金するのも止むなく、強いて買ってもら
うには、少なくとも大減額を要することになります。物品では少し位の損傷箇所があっても、
実際は使用可能なものも多いのですが、人の身体・生命は死なせたり不具にした時はどうなるか、
茲に申し述べるまでもないことです。
けれども、今迄の医療費は、治すことにあるというより、そのために用いた経費と努力に対する
評価とされるようです。診療費は全くの値引きなしで請求されるのです。真に不審な習慣が文明の
名の下に横行しています。
ところが、私共は加持神力で治し、しかも早期に治しますが、これは最も価値が高い筈です。
それどころか、苦痛なし、また口に苦い味もなく、注射針の苦痛も、大手術の心配と大苦痛も
なくして、早く治して貰っても、至って小さく評価されてはいないでしょうか。例えば、
大病院の某部長の特別診察を受けるには、病院の支払いの他に莫大な謝礼金を贈るのでなければ
診てもらえないという事実があります。別に患者はそれによって治るのでもなく、苦痛が軽くなる
ものでなく、一つの気休め料を支払っているのです。正しい信仰の世界では、功徳報謝心を呼び起こす
ことは大変な困難と大きな誤解を招くこともあり誹法の心によって誤解を招くこともあり、謗法の心
によって悪評価されることもあるのです。してみれば、これは法難の最たるものでありましょう。
勿論報恩の額は、貧しい人のためには、その人相応の謝礼が尊い評価とされるもので、富める
者と貧しき者とは大きな差があってよいのです。喜捨とは正にこのことを指すもので、有難い
報恩の思いで喜んで財を仏に捨てるということなのです。
密門会も私も大いに世の中に役立ちたいと念じていますが、正しい仏法流布にはやはり文明の
利器や諸機関を活用しなければなりません。私の活動が一局部地域に止まっているのは、浄財が
無いからです。宜しく御判読願えれば幸これに過ぐるものはありません。