加持を学ぶ
私は僧侶ではありませんが、弘法大師や織田隆弘先生の著書、密門会の月刊誌「多聞」を読み、また、毎月の定例会や年に数回開催される講習会を拝聴させて頂くことによって、
次第に隆弘先生の説く加持成仏道を理解するようになりました。隆弘先生の成仏道は易行道なので、苦しい修業ではありません。一般の方が在家として日常生活の中で容易に実践できるものです。但し、難信道です。“信”の確立が最も大事なことです。
四ツ谷の真成院では、“お加持”によって病を癒す施行を実施しています。これは経験しなければ分からないことです。“現世利益は望むものではない”とおっしゃる方もおられますが、薬を飲んで治病するのと同様で、多くの方がお加持によって恩恵を頂いていることは、織田隆弘先生の著書「如来の不思議」を読めば分かります。
病をきっかけに“加持”に出会った方は幸運です。何故なら、余程の機根の持主でなければ弘法大師の書物「声字実相儀」や「即身成仏儀」を読んで得心できる人は少ないと思うからです。加持によって法身仏である大日如来と一体であることが実感されるので、益々、信心が深くなるのです。
病が癒えたからといって、そこに留まっていてはいけません。現世利益は成仏道の入口です。つまり曼荼羅の境界の入口に立っているようなものです。更に加持門を実践すれば、次第に悟りの世界の存在を確信できるようになります。身業説法を体感して初めてその本質に触れることができるからです。
今迄、正純密教がよく理解されて来なかった要因の一つは、声字実相や即身成仏の本質を証明するお坊さんがいなかったからです。治病という現世利益を通して分かり易く易行道として解き明かしたのが織田隆弘阿闍梨なのです。
くどいようですが“加持”という事実を体感しなければ、織田隆弘先生の説く加持成仏道を理解することは困難です。是非、聞法し、毎日の勤行を実践し正純密教を学んでください。
２．加持とは
まずは、お加持を体験することです。その場で体に変化を感じる人もあれば、その時は何もなくても、家に帰ってから感じる方もあります。様々なようです。まったく何も感じない方もおられますが、簡単に諦めないで下さい。私が初めてお加持を受けた時は、体温計で体温上昇を確認しましたが、それ以外は何もありませんでした。変化を感じたのは何回もお加持を受けてからです。
初心者であれば書籍「密教の門」や「正純密教入門」あたりから読むことをお奨めします。一般仏教と正純密教の基礎を学ぶことができます。実践する場合は、書籍「難病を救う真言密教」の“加持祈念の実修”と「正純密教入門」の“加持勤行次第”が参考になります。出来れば密門会の会員になり講習会に参加して正しく真言念誦行の作法を学び、疑問点を解消しながら実践することです。直接指導を受けて会得すべきです。もし勤行をしていて何か見えたり聞こえたりするようなら危険な兆候かもしれません。聞法すべきでしょう。
即身成仏義に“加持とは、如来の大悲と衆生の信心を表わす”とあります。加持力を頂くには衆生の“信”が求められます。しかし、“信”は容易に得られるものではありません。私の場合は、これ以上疑う余地なし、陀羅尼門の加持成仏道しか自分は救われないとの覚悟に至って初めて“信”を頂いたと感じました。“信”は加持によって更に深まります。“信”が深まれば、十善戒や三昧耶戒を守り、功徳を積む大切さも分かってきます。素直に感謝する心が大きく膨らみます。加持が成仏道であると実感できるようになります。
３．摩訶不思議
“お加持で病が治る”、俄かには信じ難い話ではあります。なかなか信じられないと思いますが、織田隆弘先生の著書「如来の不思議」に多くの治癒例があるので詳しく知りたい方は読んでみて下さい。以下、魔訶不思議について個人的な考察を少し書いてみます。
お加持は岩をも動かすような大きな力ではないようです。原子や分子くらいのミクロな領域で作用する繊細な力のようです。遠く離れた病人に対しても同じように有効ですから、遠近による差がありません。面識のない病人にも作用するのですから不思議な力です。効力については個人差があり、特に免疫力を低下させる薬を用いている場合は、なかなか効験が現れないようです。加持力が、免疫力や遺伝子の活性化を促す作用として働くと仮定すれば、化学変化の基本的なエネルギーに相応し、イオン化エネルギー程度であるとすることは的外れな推察ではないと思います。
弘法大師は“雨乞い”を行っています。即日、雨が降ったという訳ではないので、雨を降らすきっかけとして加持力が作用すると考えるべきでしょう。例えば、空気中の分子のイオン化によって、雨粒の成長が促進されると推測することは無茶な仮説ではないと考えます。加持力を体験していれば、“雨乞い”は眉唾ではないと思えるのです。
摩訶不思議な話は経典にいろいろ記されています。以前、私はこれらの話を信じられませんでしたし、理解するための糸口が無いことから、読む価値なしとして無視していました。それでも、正当な経典に虚実が書かれている筈がないので、どう解釈したらよいか、
常に疑問を持っていました。お加持を知り、学ぶにつれて、”仏の世界が存在する”との確信に至ってからは、人智を超えた世界について受け入れられるようになり、今では、魔訶不思議な話の一部については不思議ではないと考えるようになりました。
”仏の世界が存在する”と言っても、この場合の“存在”と言う言葉の在り方は、この世の物質的世界観から離れて考え直す必要を感じます。物質でない世界とすれば“時間”や“空間”という束縛から解放されると考えるべきです。“時間”がないのですから、過去、現在、未来という区別がありません。もともと“時間”という概念がなければ時間に関する言及は意味を成しませんが、敢えて便宜的な表現をすれば、過去、現在、未来は“同時”ということになると思います。このような視点に立てば、”三世通観”という仏眼についても納得できる気がして来るのです。“空間”も同様に考えると、”至る所に存在する”ということになると思います。このような観点は仏の教えによく見られることです。
お加持によって仏の世界との接点が開かれるのです。これが正純密教の醍醐味です。正に「真言、庫を開く」（秘蔵宝鑰より）の言葉が心中に響いてきます。
４．易行道
隆深先生の法話を拝聴した時に「隆弘先生が説く易行道は老若男女を問わず、だれでも実践できる」という話がありました。隆弘先生が説く正純密教は、絶対他力の易行道なので、万人のための仏教と考えることができます。
実修の要は、”真言念誦行次第”にある大日如来の真言”オンアビラウンケン”を正念誦しながら唱えることです。
正念誦
「宇宙一切は六大 我も六大なり
六大一実の体は 大日如来なり
六大無碍の生命一杯なり
五智の覚体は無限の大悲なり
如来大悲の我に入り 我大悲に包まる
有難し 有難し」
観想するにあたり、”六大”、”体”、”大日如来”、”五智”、”大悲”という仏教用語を正しく理解しておく必要があります。そもそも”観想”とは何かと言うことについても分から
ないと空虚な念誦行になる恐れがあります。場合によっては外道に堕ちてしまうかもしれません。
観想は正純密教独特の内観なので、有相の三密、無相の三密、如実知自心、声字実相、…に関する知識も学んでおくべきです。特に、正純密教の教えの起点は顕教とは異なり”自受法楽”ですから、その視点から解釈していかないと”観想”を正しく捉えることはできないと思います。（学べば学ぶほど分からない仏教用語が出てくるので結構大変です。
巻頭言集を読めば先導してくれる記事もあるので活用してみて下さい。
正純密教には、いろいろな観想法があります。阿字観や月輪観なら聞いたことがあると思います。高野山真言宗総本山金剛峰寺でも阿字観道場を開設しているので、体験された方もいらっしゃるのではないかと思います。
弘法大師は、性霊集の中で「一鉢単衣にして煩擾を除き、三時に上堂して本尊の三昧を観じ、五相入観して、早く大悉地を証すべし…」と述べています。”五相”とは五相成身観のことです。五相成身観は、岩波”仏教辞典”によれば、「金剛頂経、すなわち初会金剛頂経たる一切如来真実摂経は、その冒頭に一切義成就菩薩が通達菩提心、修菩提心、成金剛心、証金剛心、仏身円満の五つの段階(krama)を履んで成仏し毘盧遮那仏となるその有様を叙述する」とあります。真言宗のお坊さんになる為の観想法の一つです。五相成身観は大変そうです。隆深先生の話では、織田隆弘先生の説く正念誦が最も分かり易く実践的とのことです。
書籍「如来の不思議」の“大日経の要”に以下の記述があります。
「三密という言葉があります。如来の大悲救済の行動を表現したものです。
初心者に具体的に示せば、有相の三密となります。即ち身密は座禅の姿勢、口密は真言念誦、意密は信心です。…」
私は”意密は信心です”という一文を読んだときにアッと驚くほどの衝撃を受けました。信心は加持によって育まれていきます。ひとたび確立したならば不動心のように堅固に常住します。あとはオンアビラウンケンと唱えるだけです。如何に”信”が大切か分かっていただけると思います。
５．加持による治癒（体験記）
隆弘先生の著書「如来の不思議」に、数多くの実証例が掲載されています。どれも貴重な体験記です。医学博士や医師の方の記事もあります。奇跡的な回復をみる症例もあれば、治らない記録もあります。治らないにしても多くの方が無痛安楽往生されています。
対象が宗教だけに最初はなかなか前向きに考えることが出来ないと思います。私もそうでした。世の中には怪しい宗教集団もありますから、抵抗があって当然です。しかし、安心して下さい。密門会の会員になりなさいと言ったヤボな勧誘なんかありません。肌で感じて判断すればよいのです。続けるか否かは本人の自覚次第です。
患者本人が参拝出来ない場合、患者の代理人として加持を受けることになります。初めて受ける時は、患者もしくはその代理人の体温を測ります。加持の施法最中は楽な姿勢で座っているだけです。加持が終わってから、もう一度、体温を確認します。感応が現れていれば体温が上昇します。感応は各人各様です。代理人に感応が現れなくても患者に変化が見られることもあります。
私の場合、かれこれ30年ほど前に片頭痛で加持をお願いしました。このときは確か、0.5度程度体温が上昇したと記憶しております。仕事上夜更かしの多い生活が多かったのですが、加持を受けた日は、遅くまで起きていられず、ぐっすり眠りました。次第に、片頭痛で悩まされることは無くなりました。これは本物だと実感し、密門会の会員になりました。密門会主催の講習会に参加し、正純密教の基本を学び、勤行するようになりました。
母が胆石を患った時のことです。夜中に、私のみぞおち辺りが、度々、痛み、起きてしまうことがありました。代理人としてお加持をお願いし、この時も体温上昇がありました。
母は手術で胆石を取り除きましたが、手術後、私の痛みも起きなくなりました。不思議な体験でした。
父が前立腺癌になった時は、隆弘先生の本を読んでもらおうとしましたが、全然、取り合ってもらえませんでした。代理人として座っていても、体温上昇を確認したのですが、他に何も感応が起こりません。それでも父には内緒で遠隔加持をお願いしました。既に、手術が困難で、抗癌剤を用いた治療を行っていましたが、腫瘍マーカの値が減少したと喜んでいたのを思い出します。加持をお願いしてから直ぐにマーカ値が下がったので、効果が現れたと私は考えています。
二年ほど前、母が脳梗塞になった時は、早速、お加持をお願いしました。一か月入院しました。いくらか後遺症が残っていますが、今では病気前より元気です。
私の体験記だけで加持力の効験を弁証することは説得力に欠けると思います。そこで、
書籍「如来の不思議」の”癌の救われた事例”から抜粋することにしました。
以上。