明けましておめでとうございます。
昭和聖代第五十七年を迎えました。昭和生れの人でなくとも、日本史始って以来の大きな記録として喜びたいものであります。
私は大正の生れでありますから、昭和初年から多くの想いでがあり、この世界的に大きな躍進を遂げた日本に生きてきたのは、
人類最高の幸せだと信じております。一面には、国に殉じた英霊に深く感謝し、菩提を祈るしだいであります。
この良き世代に生を受けた者として、後の世に遺すべき宝は何かと考えて来ました。
仏法興隆の必要をつくづく感じると共に、この仏教こそ、世界一とも言うべき日本民族の精神人格を生む根本の力であったと悟りました。
然るにと云おうか、それ故にと云おうか、占領政策は、この力を最大の攻撃目標としたのです。
軍を解除し、精神力の優秀さを消すために、漢字を廃止し、それと共に、仏教、儒教等を不振ならしめ、消滅に至らせる政策でした。
最小限当用漢字として残すに死を以って抗議した、東大山田教授の功績は、日本文化を守る菩薩行として崇められるものでした。
仏教は、神道のような戦争の根本道具となった宗教と同じく扱われて、政教分離は良いとしても、教育の中に、
歴史上果した仏教の役割を伝えることさえ禁止同様にされたのです。なるほど、法律上は信教の自由ですが、これは、
宗教をタブー化するまでになり、逆に宗教に似た、いわば邪教天国を現出することになりました。宗教法人と名告る限りいかなる嘘も許され、
これを信じた者の損失は認められないと云うのであります。一体文明とは何なのでしょうか。
ここで私が、一大警鐘を打鳴したのが、『密教宝庫を開く』の刊行です。読者からは、多くの激励と感謝が寄せられました。
けれども、基本的に仏教の教を知らない者は、一度邪教に汚染されると、真実の教の何たるかの判別力がないために、
足を洗うことが恐ろしくてたまらない、と言う程低級な精神状態となっております。
しかしながら、一つの善種を蒔いた私の運動は、必ず良識ある読者の「口コミ」によって、良き影響、善根の花の咲く時が来ることを信じます。
昭和大仏建立も、こういう私の信念の発露であります。会員の皆様は、紙上でこの壮挙を知って下され、
千載一隅の勝縁に遇うことの幸せを善ばれて、毎日のように銅板の献碑運動に参加下さっています。
昭和の時代に生れた者の記録の一つとして、この大仏像が伝来し拝まれるのも間近です。
昭和大仏即ち大日如来は、諸仏の総本体仏であり、
一切の諸仏菩薩がこの大日如来の加持によって出現されていることをよく知っていただきたいのであります。
特に、昭和大仏様は胎蔵界大日如来さまですから、総ての宗教を包容して生かす、和の根本理体であります。
戒めを守る大慈悲の源流体とも云われるお方であり、無限の功徳と大きさを蔵しておるのです。
私たちの真実先祖はこの大日如来さまなのであって、世界中の生きとして生けるものは、この仏様を忘れて生命はないのです。
近時先祖供養の宗教が乱立して、先祖とは迷える霊魂群であるというような説き方をしておりますが、それは大きな誤りです。
真言密教では、真実先祖さまは、好むと好まざるにかかわらず、又知ると知らずと関せず、
この大日如来さまこそ間違いのない祖先であることを忘れてはなりません。随って私たちは、互に助け合い、礼拝し合うべきものです。
また、菩提心のある人が、肉体の天寿尽きて逝くところが、大日如来さまなのです。
位牌に戒名を書きますが、その上に必ず阿の梵字が書いてあります。これは不滅の生命を表すマークだということを忘れないで、ご供養して下さい。
昭和大仏は、人間が生きている時は生きている時として無限の大慈悲を与えられて下さいます。
そして人間として天寿の了った時は、本当の先祖の元、つまり涅槃に帰して下さるのであります。
本年秋の末頃から、京都の工場で先ずお膝の方の鋳造が始まります。
やがて、青銅鋳物の世界一の大きさの大仏さまが、青森の新聖地に運搬される予定になっております。
昭和大仏は、昭和の御代を記念して、千年二千年の末代に伝えながら、自然に教えを垂れて下さる、総先祖たる大日如来ですから、
独り青森市民のものではなく、世界の全人類に開かれた仏の像なのです。
大日如来の教法を頂いた皆様の御参加の功徳が、他の人々の入信の良き機会にもなれかしという誓願を、
会員全部の大誓願とするものであることを自覚されれば、まことに素晴らしい聖業であると、意を強くします。
坐像二十一米、蓮台三米の偉大なるお姿を青森市に出現させ、全市街地から拝まれる日が来ることを思う時、この昭和五十七年の新春は、
有意義な中にも特に喜びを覚えるのです。
一層奮発して、後代子孫に伝える青銅製の碑銘に、「仏恩報謝」或は「国土安穏」或は「世界平和」を、又は「先祖代々菩提」を、
そして想出の御魂の名を刻み、自他の円満を祈ろうではありませんか。